はじめに
発達障害を持つ人が一人暮らしを始める際には、
とりわけお金の管理にまつわる困りごとが、
自他ともに心配なこととして挙げられます。
「一人暮らしに挑戦したい」
そのような前向きな気持ちから新生活に期待感が膨らみ、
本人の挑戦を、家族や周囲の人々も応援することでしょう。
ところが、たとえ発達障害者でなくても、
一人暮らしというのはハードルが高いものです。いわんや発達障害者をや。
やっぱり一人にさせてしまうのは心配だ……
本当に一人暮らしができるのだろうか?
本人も家族も、期待感より不安感のほうが勝り始めてしまうこともあるでしょう。
こうした心の動きは、多くの人に共通するものであり、
それだけ真剣に考えている、なによりの証拠です。
だからこそ、お金の管理がネックになって一人暮らしを諦める人が、
少しでも減ってほしいと私は思います。
そういうわけで、こちらの記事では、
発達障害を持つ人が一人暮らしをする際に、
気をつけておきたいお金の管理に関する内容をまとめました。
想定される困りごとや、トラブルに発展しないための予防策など、
基礎知識とぜひ実践いただきたいノウハウなどをお伝えします。
ぜひ、これから一人暮らしを考えていらっしゃる方や、
一人暮らしを始めた方など、ご覧いただけましたら幸いです。
想定されるお金に関する困りごと
発達障害といっても、ADHD、ASD、LD、その他の発達障害によって、
その症状は人それぞれ変わってきます。
それを前提として、以下、発達障害を持つ人に多く見られる特性と、
それに伴って起こりうるお金に関する困りごとを記述していきます。
★不注意特性
ADHD不注意型など、不注意特性の強い方には、
以下のような困りごとが発生する可能性が高いといえます。
- 財布やクレジットカードなど、貴重品の紛失
- 契約する気がなかったサービスを契約
- 意図せずリボ払いなどのクレジットカードを利用
★多動・衝動性
- つい衝動買いをする
- 長期的な見通しを立てられず給料を1週間で使い切ってしまう
- 本来希望しないクレジットカードなどの契約をしてしまう
高額商品でなくとも、日々の――例えばお菓子など――衝動買いの積み重ねが、
後々になって高額になっている、といった事例も見られます。
★こだわりの強さ
ASDの特性の一つである、こだわりの強さは、
以下のようなお金にまつわる問題を抱える可能性があります。
- 収集癖がこだわりの強さとして出てしまい、たとえ不要な物でも買うことに固執する
- 一度買うと決めたらその後必要がなくても買ってしまう
- 既に持っている物でもこだわりの強さゆえにまた買ってしまう
★計算が苦手
数量の把握が苦手なLD特性が見られる場合や、
ASDやADHDの特性から金銭感覚が通常と違う場合、
以下のような困りごとが散見されます。
- 物の値段の相場が分からず、相場よりも高いお金を支払う
- お金の大小がうまく掴めないために概算が苦手
- 自分の使ったお金を計算できず、いつのまにかお金がなくなってしまう
- 「〇割引」「〇%OFF」といった金額の計算ができず買い物の場面で困る
★遂行機能障害
自ら計画を立てて遂行する自己管理が苦手な特性を持つ発達障害者は、
- 家賃・光熱費・水道代などの必要不可欠な費用について管理が難しい
- 買い物リストを作っても余計なものを買ってしまう、又は買うのを忘れてしまう
- 収入を上回る支出をしてしまってもすぐに気づけない
こういった壁にぶつかることがあります。
★回避・逃避特性
この特性は発達障害の特性というよりは、
二次障害に見られる特性ですが、併せて紹介しておきますね。
文字通り、困りごとから回避・逃避行動をしてしまうことを指します。
発達障害者の中には、生活費が不足してしまったとき、
「とりあえず今をどうにかしなきゃ!」と、
安易にキャッシングサービスを利用してしまう人がいます。
利息を含めた無理のない返済計画を自ら立てることができればそれでも問題ないのですが、
そういったことが苦手なせいで、その場しのぎの借金を重ねてしまうといった、
借金の悪循環に陥ってしまうこともあります。
以上、発達障害者が抱えやすいお金にまつわる困りごとの紹介でした。
ただし、上記はあくまで一例であり、
先述の通り、発達障害の特性には個人差が見られるため、
本人の特性を自他ともに理解したうえで、
より確実な金銭管理の方法を見極め、
トラブル回避の対策を講じることが求められるといえるでしょう。
実行したいお金の管理方法あれこれ
さて、それではここから、
具体的なお金の管理方法について、一緒に考えていきましょう!
前項まででつらつらとお金にまつわる困りごとを書いてきましたが、
だからといって、発達障害者に一人暮らしが絶対無理なわけではありません。
完璧な一人暮らしをする必要はないのです。
実際、筆者も一人暮らしをしていますが、
あまり褒められた暮らしではありません(笑)
(※2022年6月より二人暮らしになりました)
とはいえ、「お金」のトラブルは対処が大変です。
なるべくお金の管理についてはしっかりと勉強したうえで、
一人暮らしに臨むのが良いと思われます。
一人暮らしをするうえで、最も注意すべきお金の問題は、
「衝動買いや無駄遣い防止」についてです。
衝動買いをしないように、と目を光らせてくれる家族がいないのが、一人暮らし。
もし、自己管理が苦手で、衝動買いに及びやすい特性を持っているとなれば、
消去法で考えられる代表的な対策は、以下のそれぞれに落ち着きます。
★クレジットカードはなるべく使わない
言わずと知れたことですが、クレジットカードの借金を、
知らぬ間に増やしてしまう発達障害者は本当に多いです。
実際私がその一人ですから、これはもう、身をもって話をすることができます。
全然笑えませんね(笑)
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さて、クレジットカードを利用する場合、
通常、月に数十万円単位の利用限度額が設定されています。
利用限度額が設定されているなら大丈夫じゃない?
そう思ってしまった方は危険かもしれません。
実際、信販会社からの請求が発生するのは翌月(以降)のため、
延滞などのトラブルが生じていない限り、
預貯金残高の多少に関係なく利用可能です。
この決済の流れが、衝動買いや無駄遣いに直結してしまいます。
「利用限度額はまだだし、来月支払えばいいから今月のバイト代で……」
などと言っている間に、衝動買いは積み重なっていきます。
好きなものを好きな時に買える――、
一度覚えた快楽から逃れるのは至難の業です。
特に、クレジットカードの中でも「リボ払い」とは縁を切りましょう。
大体のクレジットカード会社にはリボ払いをオススメされますし、
リボ払いにすればポイントも付きお得なような気がしてしまいます。
しかし、月々の返済額を少額に抑えられる利点を謳う反面、
「いつまでたっても返済が終わらない」
「結局延々支払い続けて、総額どれくらいになっているのかわからない」
きちんと金銭管理に努めている人からも、こうした声が止まない決済方法です。
筆者はリボ払いによって借金地獄にいる発達障害者の一人です。
(※2022年6月現在、ようやく完済しました)
月に3万円まで、という上限額がいつの間にか増やされ、
月に5万、7万、10万……となり、月々の返済額はほんの少しにもかかわらず、
何十万といった借金を背負わされています。
自業自得ですが、契約当時はリボ払いについて何も知らなかったので、
お得だよ、の一言でこの支払方法を選んでしまいました。
もしリボ払いを検討している発達障害者の方がいらっしゃいましたら、
声を大にして言います。絶対やめた方がいいです。
さて、そもそもクレジットカードの利用をなるべく避け、
現金で支払うことを心がけたほうがいいのですが、
どうしても現金支払いが難しい場合もあるかと思います。
そのようなときは、デビットカードやプリペイドカードを検討してみてください。
まず、デビットカードの場合、
カードを利用した直後に指定口座から引き落とされる、
即時決済システムが採用されています。
つまり、その時その場にないお金は払うことができません。
したがって、無駄遣いなどの抑制効果にすぐれているといえます。
さらに、1日あたりの利用可能限度額も設定できるため、
浪費を確実に抑えることが可能です。
次にプリペイドカードですが、
こちらは事前にカードに現金をチャージから、
その残高内でクレジットカードに準じた利用が可能です。
チャージした金額が上限となるため、
金銭出納管理が苦手な人でも、自ら無駄遣い対策を講じやすいのがメリットです。
1ヵ月あたりの利用限度額を抑えて入金する習慣を心がけることで、
自己管理対応が可能となります。
★家族と一緒に事前に予算を組んでおく
お金の管理というのは、発達障害者でなくても難しいものです。
一人でやるのが難しいのであれば、家族や周囲の人に頼りましょう。
発達障害の特性として、
情報量と必要となる作業量が増えた結果、
わからない!面倒くさい!やっていられない!
ストレスから投げ出してしまうことがあります。
まずはお小遣い帳の感覚で、無理せず臨んでみてください。
収入を大まかに計算し、そのうえで支出について、
「食費/暮らしに必要な諸費用(家賃その他)/浪費(おこづかい)」など、
ざっくりと大きく分けたものでいいので、
予算を見据えて、それぞれの上限を確認してみましょう。
この作業に際しては、「マネーフォワードミー」といった、
金銭管理アプリの活用も有効であると思われます。
興味を持ったことに対する集中力の高さもまた、発達障害の人に共通する特性です。
これを活かさない手はありません。
少しずつ挑戦を重ねることで、その管理も上手くなってくることでしょう。
大切なのは完璧を目指さないことです。
完璧を目指さず、ざっくりした管理を継続していくことで、
自然と予算を組むことができるようになります。
最初は難しいかもしれませんが、応援しています!
まとめ
ここまで、一人暮らしに際して気をつけたい、
お金の管理に関して述べてきましたが、
これらはすべて、自己対応を推奨するものではありません。
もし、一人暮らしをするのであれば、
一人で抱え込まず第三者を頼る姿勢を身につけておきましょう。
相談できる相手を家族に限定する必要はありません。
公的な相談機関の存在も視野に入れ、
複数の相談相手を確保する作業を通じて、
自身の人間関係の輪を広げておきましょう。
発達障害でない人にとっても初めての一人暮らしは、
大きな冒険(チャレンジ)に他なりません。
『一人』暮らしは『なにもかも一人で対応せねばならない』わけではありません。
大丈夫。その決意に自信を持って、最初の1歩を踏み出しましょう!
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