はじめに
いきなりですが質問をひとつ。
視覚障害のある人が道を歩くときに持っている、
あの、白い杖の正式名称をご存知ですか?
答えは「白杖(はくじょう)」。英語では”White cane”といいます。
弱視やまったく目が見えない人など、
視覚障害を持つ方々にとって、なくてはならない大切なツールです。
この白杖、ひと目見る限りでは単なる白い杖のように思われますが、
実はさまざまな種類があります。
ここでは以下、白杖の種類や使い方、
さらにはどのような人が所持しているのかなど、
私たちが正しく認識しておきたい基礎知識をご紹介します。
ご存知でしたか?白杖関連基礎知識
まずは多くの晴眼(はっきりものが見える)の人が抱きがちと思われる、
白杖に関する誤ったイメージについて、触れておきたいと思います。
白杖使用者は必ずしも全盲の人とは限りません。
正直、著者である究万(くま)自身、つい最近までこの事実を知りませんでした。
目が見えない人=「視覚障害者」じゃないの?
弱視という言葉でさえ、今年、ミライロハウス(※)で、
弱視の方に出会うまでは知りませんでした。
※ミライロハウスについてはコチラ。
▼ミライロハウスTV出演記録
白杖を手に道を歩く姿を見ると、
光すらまったく感じられない全盲者だと思い込みがちですが、
実際には視覚障害者に占める全盲者は約2割で、弱視者(※)が大半だそうです。
(※視界が狭い、色の認識がしづらい、眼鏡などでは十分な視力矯正が困難などの人)
▼あわせて読みたい
こうした弱視者だけでなく、
視覚障害者以外(聴覚障害や歩行機能障害など)の人も、白杖を使用します。
「少しは見える」「ぼんやりと見えている」「視力には問題がない」人が、
より安全に行動すべく白杖を使用しているケースは、決してめずらしくありません。
白杖の使い方
先に触れた通り、白杖にはさまざまな種類があり、
使用する人にとって使いやすい、
よりフィットする個体を選ぶことができます。
使用者の体格(身長)や歩く速度、
さらには体力(腕力)には個人差がありますよね。
したがって、各々にベストな長さ・重さ・形状などは、自ずと異なるのです。
では、白杖の種類を紹介する前に、
代表的な使い方について解説しておきましょう。
白杖の代表的な使い方
白杖は主に、以下の3つを目的に使用されます。
★進行方向の安全確認
進みたい方向の1歩先の地面を白杖で叩く、先端をスライドさせることで、
障害物の有無や地面の状況、進むべき方向を確かめます。
点字ブロック上を歩く際にも、足の裏の感覚と白杖で触れた感覚を用いて進みます。
★視覚障害者であることを周囲に知らせる
白杖を持っていることで、
「私は視覚障害を持っています」と伝える効果が期待できます。
白杖所持者の視覚障害の程度は十人十色ですが、
見えづらいことで周囲の人に気づかず、
ぶつかってしまうリスクが小さくありません。
「白杖=視覚障害者」との認識は、すでに世の中に定着しています。
白杖は周囲の人に、視覚障害者に対する注意を促す役割も担っています。
★音の反響による現在位置の確認
白杖で地面を叩いて生じる音の反響を聴き取り、現在地の状況を推察確認する方法です。
熟練者になると、今いる場所がどの程度の広さなのか、
出入口の方向はどちらなのかなどを、かなり正確に把握できるようです。
視覚障害者のなかには、このように音の反響を頼りにしている人もみられます。
実際、私が幼い頃に習った「白杖」の知識は、
こういった高度な使い方についてで、すごくびっくりした覚えがあります。
それが故に、白杖を持つ人たちは皆全盲者であると、
どこかで思い込んでいた節があります(-_-;)
白杖の種類いろいろ
では、早速白杖の種類について解説していきましょう!
「白杖」はいくつかの種類に分類されますが、
何を基準にするかによって、分け方が異なります。
ここでは、形状を基準にした場合と、
使用目的と使用者の見え方の違いを基準にした場合、
それぞれの視点から解説します。
形状を基準に分類した3種類
★直杖(rigid cane)
その名のとおり連結部分がない基本的なタイプです。
★折り畳み式(folding cane)
白杖のシャフトを4段もしくは5段折りの部品に分け、折り畳みが可能です。
シャフトの中にゴムが入っており、
各部品をじゃばら折りにして収納できるため、持ち歩きに便利です。
★スライド式(slide cane)
ラジオのアンテナのように各部品をずらして収納するタイプです。
使用目的と使用者の見え方を基準に分類した3種類
★ロングケーン(long cane)
歩行に際して1歩先の障害物を把握する目的で使用されます。
一般的に知られる代表的な白杖で、直杖と折り畳み式があり、形状も長目です。
★シンボルケーン(symbol cane)
周囲の人に自身が視覚障害者であることを知らせることを主目的として使われます。
弱視の人など全盲の人ほど歩行に支障がない人に、多く用いられています。
ロングケーンと比較して短く細い形状が特徴です。
別名「IDケーン」とも呼ばれています。
★支持ケーン(support cane)
別名「身体支持杖」とも呼ばれる、
使用者の身体を支える目的で用いられる白杖です。
頑丈かつ柔軟性のある材質で制作され、グリップが柄になっています。
主に足腰が弱い人や高齢者に使われます。
まとめ
さまざまな目的で使用されている白杖は、
視覚障害を持つ人が移動するうえで、
必要不可欠なアイテムです。
しかしながら、白杖さえあればいつでもどこでも安全に行動できるわけではありません。
先に述べた通り、白杖を使って歩いている人は、
白杖から伝わる地面の微妙な感覚や、周囲の音を頼りにしています。
どれだけ通い慣れた場所であったとしても、
普段通りの生活音が聞こえづらい場合、
一気に単独行動が難しくなってしまいます。
とりわけ全盲の人の場合、
たとえば電車が通過する駅のホームや工事中の道路などでは、
極度の緊張感に襲われるだけでなく、自身の現在地すら見失いかねません。
もし、白杖を手にした人がその場から動けず、
明らかに困っている場面に遭遇したとき、
私たちはどのように対処すべきでしょうか?
このテーマについては、あらためて別の機会に、
みなさんと一緒に考えてみたいと思います(*´ω`*)
コメント