はじめに
ADHD(注意欠如・多動性障害)は、
現時点で明確な原因は究明されていませんが、
先天的に脳の機能に偏りがあるとされる、発達障害の一種です。
ADHDの特性は、大きく分けて、不注意性・多動性・衝動性の3つがあります。
そして、不注意性を強く持っているADHD患者にとって、
最たる困りごととして挙げられるのが、忘れ物だといえます。
不注意性と一口にいっても、
注意の切り替えが苦手であったり、集中力の持続が困難であったり、
その症状の現れ方は様々ですが、結果として、
忘れ物が多いADHD患者は数多くいらっしゃいます。
置き忘れや紛失などを繰り返してしまい、
日常生活だけでなく仕事上でも困難を抱えがちです。
ここでは以下、そのようなADHDの人々に向けて、
ぜひ実践いただきたい忘れ物対策をご紹介いたします♪
ADHDの特性と実社会における困りごと
忘れ物を繰り返してしまう原因と考えられるADHDの特性として、
次の傾向が多くの人に見受けられます。
★注意の切り替えが難しい
注意の切り替えというと何やら難しい気がしますが、
簡単にいえば、他の出来事に意識をとられてしまい、
その前に自ら立てた計画の遂行、
それ自体を忘れてしまうといったようなことです。
もう少し分かりやすく言い換えましょう。
例えば、今日は図書館に行って本を返そうと思っていたとします。
しかし、いざ外に出てみると外は土砂降り。
慌てて傘を取りに帰ったら、どうやら傘が壊れている様子。
仕方なく家の近くにある百円ショップに走って傘を買いに行きます。
なんとか傘を買うことができ満足した私は、そのまま帰路へ……。
帰ってから何か忘れたような気がする、と考えても思い出せず、
眠るころになってようやく図書館の本を返却し忘れたことに気づくわけです。
不注意特性を持たない人にとっては、
もしかするとバカみたいな話なのかもしれません。
ただ、これは筆者の実話です。それも、一度や二度ではなくよくあります。
つまり、他のことに気を取られたせいで、
自ら行おうと思っていたことを簡単に忘れてしまう、
そういった注意の切り替えの困難さによって、
忘れ物をしてしまうケースは多々あります。
頭の中では「忘れ物をしてはならない」と繰り返し自分に言い聞かせていても、
何か突発的な変化が生じた瞬間、それを失念してしまいがちです。
これが高頻度で繰り返されれば、社会生活に支障が生じて当然でしょう。
とりわけ仕事に関することとなると、
たとえ障害に理解がある職場環境であったとしても、
すべてを許容してもらうというのは少し無理があります。
忘れ物対策を講じるに際しては、
まず、この特性を真正面から冷静に受け止め、
頭の中だけでなく、実際に行動が伴う忘れ物対策を考える必要があります。
一緒に考えましょう!忘れ物対策
さて、ADHDの人における忘れ物対策は、
頭の中で自己確認するだけでは不十分だといえます。
ここから発想を転換することで、より効果が期待できる方法のヒントが見えてきます。
そう、頭の中で「忘れ物をしないように」と念じるのではなく、
実際に「忘れ物をしないための」行動を起こすのです。
- 実行すべきことをリスト化、いつでも確認できるようにする
- 扱いに負担とならないアイテムを活用する
- 前日準備のルーティン化、声だし確認を身につける
以下、それぞれを掘り下げてみます。
リスト化の徹底
頭の中で確認しても忘れ物の頻度を改善できないのであれば、
次の一手は目視確認です。
ただし、ADHDの特性上、
確認すべき資料が複数になれば、見落としが生じるリスクが高まります。
ノートでも紙でも構わないので、1つにまとめましょう。
いつでも携帯できて、その都度無理なく確認できる、
チェックすべきポイントを箇条書きした書面を作成しましょう。
持ち物リストは日々変わりゆくものです。
変わった場合は先延ばしをせずにその場で書き換えを行いましょう。
逆に毎日必ず持っていくものといった、不変的な持ち物リストは、玄関などに貼っておくとよいでしょう
保管場所を決める
こちらは、整理整頓が苦手なタイプのADHDにオススメしたい方法です。
出かける際に必要なアイテムが見当たらず、
それを探している間に持っていくべきものを忘れた、という経験は、
ADHD患者にはきっと多いのではないでしょうか?
自身が保管すべき大切なものが見当たらなければ、誰もが混乱して当然です。
毎日出勤する際に必要なアイテムや、お金や財産に関連する貴重品など、
これらに関しては自身で決めた場所に、毎日正確に保管する習慣を実践しましょう。
また、家族や恋人などの信頼できる人とは、
これらに関する情報を共有しておく、といった協力を求めるのも一つの手です。
なんでもリュックを利用する
ADHDの人に有効なリュック、というわけではありませんが、
忘れ物の多いADHD患者がよく使う鞄があります。
――なんでもリュックです。とはいっても、正式名称ではなく、
私を含めた一部の人が、自分の使うリュックをそういう風に呼んでいます。
このリュックには、その名の通り「なんでも」入れてしまいます。
そして、基本的に毎日そのリュックを持ち歩くことにしておきます。
そもそも荷物の入れ替えなどをするから忘れ物が増えるのです。
であれば、全てを入れたリュックを持ち運べば、
多少重いのはデメリットにせよ、忘れ物が減ること間違いなしです。
ちなみに、ADHDの人のために作られたリュックもあります。
おそらく「ADHD リュック」で検索すれば出てきますが、
残念ながら現在は生産を中止されているようです。
前日準備を当たり前にする
これも発達障害(ADHD)の特性なのか、「あれも必要、これも必要……」と、
膨大なアイテムを手元に揃えてしまう人は数多くいます。
これまでの経験から、安心感を得ようと荷物を増やしてしまうのかもしれません。
しかしながら、それを管理しきれないのもまた、ADHD患者の特性です。
結果として必要不可欠なアイテムを忘れてしまい、
自ら困りごとを増やしてしまえば、それこそ悪循環といえます。
不安感を減らすには、前日準備を当たり前にすることが有効だといえます。
極力前日にきちんと準備を整え、確認することで不安感を軽減しましょう。
また、前日準備の際には、目視確認だけでなく、
声を出して確認することがオススメです。
この対策は、決してADHDの人に特化した手法ではありません。
たとえば電車やバスの運転士は、
秒単位で自身の一挙一動を発生確認しています。
安全安心な日常生活を守るべく、
こうした習慣を実践している事例は少なくありません。
前日準備も、声を出すことも、ルーティン化してしまえば楽チンです。
まずは挑戦してみましょう!
まとめ
さて、ここまでいろいろな忘れ物対策を述べてきましたが、
仮にこれらをすべて実行できたからといって、
自身の特性を、直ぐに修正することはできません。
それは恥じることではなく、誰でも当たり前のことです。
少しずつ挑戦することで、
徐々に自身の特性ともうまく付き合っていけるのではないでしょうか?
仕事上でのミスは周囲に迷惑をかけてしまうこともあり、
気持ちが落ち込んでしまうこともあるでしょう。
しかし、忘れ物対策を自分なりに一生懸命講じている、
その姿勢と目に見えぬ努力は、必ず周囲の人たちに伝わります。
いつしか自然と着実に改善されていれば、それがベストですね♪
忘れ物で困っている皆さんが、気負いすぎることなく、
前向きに特性と付き合っていけたらと思います。
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[…] 大人のADHDについて、忘れ物対策をまとめてみました! 【はじめに】 ADHD(注意欠如・多動性障害)は、 […]