はじめに
障害者虐待防止法は、障害者虐待を社会全体の身近な問題としてとらえるべく、平成24年10月に施行された法律です。
この全文に関しては、
厚生労働省や全国各自治体の公式ホームーページ上などで、その内容を確認できます。
関心をお持ちであれば、ぜひ直接アクセスからご確認いただければと思いますが、
法律の文章である以上、その文体は難解と感じられるでしょう。
というわけで、ここでは以下、
障害者虐待防止法に関し、やさしく噛み砕いた説明をお届けします。
同法律が意味する障害者虐待とは?
いきなりですが、みなさんは『虐待』という言葉の響きから、どのようなイメージを描かれるでしょうか?
少し冷静に考えれば、お気づきになるかと思われます。
法律の名称に『虐待』の二文字が明記されるなんて、普通じゃないかも?……と。
そこでここから話を進める前に、この法律がいうところの『障害者』の意味を、きちんと確かめておきましょう。
さて、障害者虐待防止法の対象となる障害者とは、身体、知的、精神(発達障害を含む)、その他の心身の機能に障害が見られる人とされています。
そして、自身の障害もしくは社会的障壁のため、
継続的に日常もしくは社会生活に、一定以上の制限を受ける状態にある人ともされています。
障害者手帳取得の有無は関係なく、これらに対しての、本人の自覚は問われないとされています。
平たく整理すると、
「障害者であることで、いわゆる健常者とされる人たちと比較して、社会生活上かなりの制限を受けている人」
と言い換えられるでしょう。
3つの障害者虐待のケースとは?
この法律では障害者虐待を、以下の3つのケースに分けてとらえています。
養護者による障害者虐待
ここで言うところの『養護者』とは、
障害者の身の回りの世話や金銭管理を行う人で、
家族、親族、同居人もしくは、
同居していない親族、知人などが該当することもあります。
障害者福祉施設従事者等による障害者虐待
同じく『障害者福祉施設従事者等』とは、
障害者福祉施設もしくは障害福祉サービス事業など、
それらに係る業務に従事する人を指します。
使用者による障害者虐待
同じく『使用者』とは、
障害者を雇用する事業主もしくは事業の経営担当者、
その他その事業の労働者に関する事項について、
事業主のために行為をする人を指します。
※ここでの事業主には、派遣労働者による役務の提供を受ける事業主なども含まれます。
障害者虐待の具体例
続いては障害者虐待とはどのような行為なのか、
それぞれを確認しておきましょう。
大きく分けて、以下の5つが該当します。
それぞれどういった虐待なのか、
まずは字面を見て考えてみましょう。
- 身体的虐待
- 性的虐待
- 心理的虐待
- 放棄放置
- 経済的虐待
いかがですか?
虐待の内容が大体思い浮かべられたでしょうか。
それでは以下、順番に、各々についての補足説明をお届けします。
いずれも意識・無意識を問わず、日常的に行ってしまっている可能性が否定できません。
この機会に今一度、真摯な気持ちで再確認しておきましょう。
① 身体的虐待
平手打ち、殴る蹴る、叩きつける、無理矢理飲食させる、閉じ込める、など
② 性的虐待
性的な行為あるいは接触の強要、障害者本人の前でのわいせつな発言、
わいせつな映像の鑑賞を強いる、など
③ 心理的虐待
恫喝、ののしる、仲間外れ、無視、子ども扱い、など
④ 放置放棄
食事や水分を与えない、着替えや入浴をさせない、
排せつの介助をしない、掃除をしない、など
⑤ 経済的虐待
生活費を渡さない、年金や財産などを本人の許可なしに処分運用する、など
障害者虐待防止センター
障害者虐待は時に、当事者の周囲の人(たち)が、
悪意無く無意識に及んでしまうケースが否めない、ある意味非常に繊細な問題です。
こうした現状を踏まえ、設置が進められているのが、障害者虐待防止センターです。
こちらは、虐待に気づいた人からの通報や、
虐待を受けた当事者からの届出を受け付ける役割を担う、
この法律にとって、大変重要な役割を果たす施設です。
虐待を受けた障害者の安全確認から、
自治体・警察・医療機関などの連携を通じ、
被害者の支援方法を検討するとともに、
虐待防止や養護者の支援も行います。
まとめ
法律の条文はいずれも難解で、
その効力や重要性こそ認識できている一方、
条件反射的に腰が引けてしまう人が、潜在的に少なくないかと思われます。
自分は警察に捕まったわけではないのだから、関係ないでしょ?
今回取り上げた『障害者虐待』は、
弁護士などの専門家が論じる、別世界文言なんて、正直勘弁願いたいね
故意や悪意などが見当たらないのにもかかわらず、
加害者となってしまう可能性がある問題です。
というのも、例えばですが、
重度知的障害者の介護をしているときに、
受給した障害年金を運用するのは基本その保護者です。
その使い方によっては先述した経済的虐待を行ってしまう可能性も、
ないとは言い切れないのが現状です。
虐待している側とされている側、
双方が気づいておらず、適正ではない理不尽なパワーバランスが、
当たり前になってしまっているケースも少なからずあります。
障害者虐待というテーマは、
2016年にあった相模原障害者施設殺傷事件で、大きな注目を浴びました。
それでもまだ、自分には関係ない……、と考えていらっしゃる方も数多くいます。
障害者虐待を根絶するためには、一人ひとりの意識改革が必要でしょう。
地域住民の通報が加害者・被害者双方にとって良い結果になることもあります。
これまで障害者差別や虐待に興味関心のなかった方も、
今日からはぜひ、アンテナを広げてみてくださいね。
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