発達障害というのは、現在の通説によれば乳児期から決まっているもので、
これまで発達障害でなかった人が、
大人になっていきなり発達障害になることはない、とされています。
とはいうものの、アスペルガー症候群の診断概念が、
注目を受けるようになったのが、国際的にも1980年代のことで、
まして日本で発達障害の診断が普及するようになったのはもっと後ですから、
「見落とされたまま」大人になってしまった発達障害者は、
現在の日本の中年期以降の世代には少なからずいるといわれています。
大人になってからでも、精神科などを受診し、
医師から発達障害の診断を受けることはできます。
なお、診断は医師によってのみ行われるため、
例えば臨床心理士や精神保健福祉士などが、
誰かについて、発達障害の診断をすることはできません。
発達障害に伴う問題として多いのは、
抑鬱などの二次障害の問題と、そしてソーシャルスキルに困難を抱えること、
これらが挙げられるわけですが、ソーシャルスキルの訓練、
すなわちSST(ソーシャル・スキル・トレーニング)は、
成人期になってから生じる問題についても、
ある程度までの困難を解消することはできるとされています。
■成人期発達障害者に見られるトラブル
学校や職場でのトラブル
発達障害者の場合、仕事や授業など、
明確にやるべきことが決められている状況で困ることよりも、
やることが定められていない休憩時間などに、
「どう行動していいか分からない」「一人で行動してしまう」など、
困難を抱える状況が生じることが多いとされています。
理由として挙げられるのは、
発達障害者の多くに、言外の意図を読み取る能力が弱く、
集団の会話の主題などを掴むことができず、
場違いな発言をしてしまったり、何を言えばいいか分からなくなったりする、
といったものが挙げられるでしょう。
家庭でのトラブル
感情のコントロールが苦手で、
すぐ怒りを爆発させたり、逆に相手に甘えすぎたりしてしまうことから、
家庭での行動に問題を抱える人もいます。
外出時のトラブル
普段は温厚な人だと周囲からは見られているのに、
外ではやたら怒りっぽくて他人の行動にクレームをつけるなど、
極端な行動に出てしまう種類の発達障害者もいます。
余暇のトラブル
ゲームやパソコン、カメラなどに異常にのめり込み、
没頭してしまうタイプもいれば、
逆に集中できる物がなく、無気力になってしまうというケースもあります。
■成人期ソーシャル・スキル・トレーニングの実践
会話をする
他人と雑談や世間話をするためのスキルです。
他人との距離をはかり、見合った内容の会話を選ぶことが大切になります。
あらかじめ自己紹介や、一般的な話題の運び方について、
トレーニングしておくことが有効です。
感情を処理する
怒りをコントロールし、状況に冷静に対処することができるかどうか。
これについてはネルソン=ジョーンズの、
「非難や批判に対処する方法」というものが知られています。
- 相手の言葉を繰り返す。
- 非難の内容を部分的に容認する。
- 質問をさしはさむ。
- 相手の非難の内容ではなく「言い方」をフィードバックする。
- 時間を置き、対応を先送りする。
たくさんの指示に応答する
メモの用意をする、メモを取った内容を反復する、などの方法を用いて、
たくさんの指示を同時に受けても、
パニックに陥らないようなトレーニングを積みます。
問題解決のために謝罪する
謝るべき場面を理解することと、
上手な謝罪の仕方を理解することが二つの柱になります。
- まずは謝罪の言葉を口にする。
- 自分がどういう点について反省しているか言語化する。
- 失敗した理由を自ら分析し、言葉に変える。
- 今後の課題について述べる。
■成人期のSSTについて
以上のように、ソーシャル・スキル・トレーニングというのは、
多分に実践的な技法なので、
まずは「何に困難を抱えているか」のアセスメントを行い、
しかるのちその困難を解決するためのアプローチを行う、
というやり方をすることが一般的です。
成人期になってから初めてSSTを受けるという人も、
中にはいらっしゃるかとは思いますが、
適切に受ければ相応の効果を発揮するものですので、
専門家のアドバイスをよく聞き、
身になるように導入していくことをおすすめします♪
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