はじめに
強度行動障害への対応には、
障害の特性や周辺環境の正しい理解と、
医療を含めた特別な支援が必要です。
自虐行為・他人や物に危害を加えるなどの危険行為が高い頻度で見られるため、
周囲の人たちの暮らしへの影響が避けられません。
ここでは以下、強度行動障害についての解説をお届けします。
強度行動障害に見られる特徴
強度行動障害の人には、以下のような特徴的行動が見られます。
これらがどの程度の強さと頻度で確認されるのかを総合的に見極めることで、
より的確な支援ニーズを図る対応が求められます。
★酷い自傷(自虐)行為
傷を負うほどに自身の頭を叩く、引っ掻く、膝や肘を壁や床に打ち付けるなど、
周囲の人が目を覆うような行為が見られます。
★強烈な他害行為(対人)
周囲の人に噛みつく、殴る、叩く、髪を引っ張る、体当たりするなど、
手加減無用で攻撃を加えることがあります。
念のために補足しておきますが、勿論他害行為をしたくてしているわけではなく、
どうしてもそれが止まらないというのがこの障害症状です。
★激しい破壊行為
小さな家具や眼鏡といったものから、
ガラスやドア、食器といった危ないもののまで、
手あたり次第に破壊する行動が止まりません。
また自身の着衣を破るなど、先述の自虐行為と重なる行動も確認されています。
★著しいこだわり
気になるものがあるとそこから動けなくなり、周囲の指示を頑なに拒み続けます。
また一度始めた行動(例えば大声で泣く等)が延々と続き、
周囲が止めようとしてもなかなか止められず、
自身もその行為をやめることができません。
★極端な睡眠の乱れ
不眠症を伴うことで昼夜逆転をしたり、うまく寝床についていられなかったり、
そういった結果から気持ちの不安定さが出現、
自傷他害や破壊行為に及ぶことがあります。
★食事関連の強い障害
偏食が極まり健康状態に異常をきたす、
食べられないものを口に入れてしまうなど、
見過ごせない行動が目につきます。
落ち着いて食卓前に座れず、食事を採ることができないケースも報告されています。
異食症と呼ばれる障害を持つ人もいます。
★著しい多動・騒擾(そうじょう)
少しでも目を離すとじっとしていられず、危険な高所に上るなどの行動が見られます。
また突発的に大声を出し、一旦き出すと号泣状態が数時間続くこともあります。
強度行動障害の原因
強度行動障害は、本人の興味や関心の限定、強いこだわりが原因とされています。
強い執着性や感覚の過敏性などの障害特性が、
本人が置かれた環境と合致せず、その結果周囲の人や物に対し、
嫌悪感や不信感を高めてしまうメカニズムです。
自閉スペクトラム症や知的障害の人に発症率が高いとされていますが、
必ずしも障害の重さに比例するわけではありません。
本人の特性や周囲の環境によっては、
軽度の発達障害の人にも強度行動障害が見られることがあります。
強度行動障害の特性
強度行動障害の人に見られる特性を、
その原因と関連づけて検証してみましょう。
★コミュニケーションが苦手
自閉スペクトラム症や知的障害の人の場合、
外部からの刺激や情報が、分かりづらい独特な形で入ってくることがあります。
また自身が伝えたい内容を、
言葉ではなく独自の表現や行動で伝えようとするため、
相手が理解に苦しんでしまう傾向も見られます。
このような場合、相手の言っていることが判らないことへの不安や、
自身の現状に対する不快感を上手く言葉にできず、ストレスが蓄積しがちです。
こうした悪循環で生じた負の感情が積もってしまい、
我慢できなくなった結果、強度行動障害につながるとも考えられています。
★こだわりが強い
発達障害の人には、こだわりが極端に強い、
興味や関心を抱く対象が限定される、
臨機応変に時間を使うことができないなどの傾向が見られます。
そのため、できること、やりたいことが極端に少なく、
自由時間を持て余してしまうことも少なくありません。
結果、暇つぶし的に自傷行為に及ぶ、
延々と同一行為を続けてしまうなど、
行動障害の範疇に入る行動が見られることがあります。
★衝動を自制するのが苦手
自らの衝動性を抑えることが苦手なため、
一度始めてしまった行動を止められない、
あるいは感情的(突発的)な行動に及んでしまう、といったことが挙げられます。
これが頻発することで、
強度高度障害であると判断されるケースも報告されています。
強度行動所外への支援
発達障害の人が見せる強度行動障害への支援に際しては、
以下の基本的なポイントを見据える必要があります。
★行動障害が現れるシステムの見極め
本人によって表現された行動障害そのものを、
その都度抑制するだけでは、適切かつ効果的な支援であるとは言えません。
先に述べた通り、強度行動障害は、
本人の特性と置かれた環境が合致せず、
負の感情が爆発することが引き金となって現れると考えられています。
さまざまな要因が複合的にシステム化している可能性を視野に、
個々の要因を見極め、それらがどのように関与しているのか、
解明しし細やかな対応をすることが必要となります。
★生活全体の見直し
本人の日常生活が特性に合致しているか、
楽しみをどのように確保するのかなど、
現在の生活全体を見直す必要があります。
その上でより円滑なコミュニケーションが可能な環境を整備から再構築する、
根本的な生活全体の見直し作業が望まれます。
★強度行動障害の防衛的性格
先述の自傷他害、破壊行為などは、
その特性上、どうしても攻撃的な行動と捉えられがちですが、
本人の持つ特性への拒否反応、すなわち防衛反応であるとも解釈できます。
「SOSを発信している」――このような視点から、
本人が及んでいる行動障害を検証することで、
必要と思われる支援を見極めることが可能かもしれません。
★医療対応
強度行動障害を家族だけで解決しようとするのは、
あまり得策とはいえません。したがって、外部の医療機関や、
福祉施設の利用を検討することが勧められます。
福祉としての価値観と医療の健康観を適切に調整し、
薬物療法などを含めた医療対応が望まれるといえます。
まとめ
強度行動障害は、本人からのSOS――すなわち、
困りごとのサインであると捉えられます。
言葉で上手く伝えられないために、
第三者には行動障害と映る行為を通じ、
「困りごとがあるから助けて!」
このように懸命に訴えているとも考えられます。
強度行動障害は本人だけでなく、
家族や周囲の人にとっても、大きな心身の負担が避けられません。
まずは本人の特性や周囲の環境などを正しく把握し、
根気よく原因を探る作業が必要です。
また家族だけでは十分な対応が難しい障害です。
障害福祉サービスを活用することで、
専門家のサポートを仰ぎながら、状況の改善に努めていくことが勧められます。
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