はじめに
グループホームという言葉から、みなさんはどのような施設を思い浮かべますか?
「認知症の高齢者を対象とした施設」――そういったイメージが多いかもしれません。
しかし、近年では、障害のある人が共同生活を送る、
障害者のためのグループホームも増加傾向にあります。
ここでは以下、障害者の自立を支援する障害者グループホームについて、
その利用方法など、正しく踏まえておきたい関連知識を解説します。
障害者グループホームとは
障害者グループホームは、障害のある人が共同生活する施設です。
これらで暮らす人に対しては、日常生活上の介護や支援が提供されます。
というのは、障害者をサポートする側である家族の、
大きな負担を少しでも減らすためでもあります。
困りごとを抱える障害のある人本人はもちろん、
そんな彼らを支援する家族もサポート・支援されるべき存在です。
障害者総合支援法が定める障害福祉サービスのひとつとして、
障害者グループホームは、
障害のある人が地域社会で自立した生活を送れるよう、
本人や家族にとって必要なサポートを提供する目的で運営されています。
施設内の暮らしと環境
障害者グループホームでは、
障害のある人が集合住宅の一室あるいは一軒家で、
自立した生活ができるようになることを目的に、共同生活を行います。
施設には職員や資格を持った介護士の方などがおり、
必要に応じて食事、入浴などの介護を受けることができます。
また、日常生活上の困りごとを相談することもできます。
スタッフのサポートを受けながら、
障害によって生じる困りごとへの対処法を身につけ、
地域のボランティア活動などの社会活動へ参加をすることで、
地域社会や人とのつながり方を学び、自立できるように訓練します。
こうした生活環境のなかで、
入居者は自立した生活に求められる基盤を、
各々のペースで身につけていくのです。
対象者と入居条件
障害者グループホームは、
支援があれば自立生活が可能であり、
共同生活に支障のない障害者(※)に該当する人を対象とする施設です。
知的障害や総合失調症などの精神障害のある人の利用率が高いとされています。
※障害者総合支援法による定義となっています。
※身体障害者の場合は65歳未満、もしくは65歳に達する前日までに、
障害福祉サービスまたはこれに準じるサービスの利用経験者に限られます。
通勤通学する人、就労移行支援事業所に通う人、
地域活動支援センターを利用する人など、
さまざまな入居者が暮らしています。
★入居対象者
先述の通り、障害者総合支援法の規定に基づく、
以下のいずれかに該当する人が入居対象です。
- 知的障碍者
- 精神障害者
- 身体障害者
- 難病患者
★利用に際しての原則
原則として以下の条件を満たす人が利用可能です。
- 『身体障害者手帳』『精神障害者保険福祉手帳』『療育手帳』、
- これらいずれかの障害者手帳を持っている。
- 障害支援区分1~6いずれかに認定されている。
ただし、障害者グループホームごとに、
対象となる障害や区分が異なります。
対象地域の障害福祉課などで事前に確認しておきましょう。
障害者グループホームのメリット
ではここで、障害者グループホームのメリットとデメリットを、
それぞれ確かめておきましょう。まずはメリットです。
自立した自分らしい生活を目標にできる
同施設は利用者が自立生活を送ることができることを目的としています。
入居者全員が一律のサポートを受けるのではなく、
個別の支援計画を立て、それらに沿ったサポートを受けることで、
自分でできる範囲を広げていきます。
一人でできることが増えると、それらが自信となります。
こうした実感を重ねることが、
自立した自分らしい生活の実現へとつながります。
第三者とのコミュニケーションの機会が増える
障害のある人のなかには、コミュニケーションへの苦手意識から、
第三者と距離を置いてしまう人も見られます。
障害者グループホームでは、
困りごとの相談に乗ってもらえる専門のスタッフに、
こうした悩みを相談することが可能です。
また、施設内には、他の利用者と一緒に過ごすための、
共同スペースが設けられていることが多く、
一緒に食事や清掃を行うことで、
自然と会話を交わす機会に恵まれます。
さらには定期的なレクリエーションを実施している施設もあり、
そういったイベントに参加することで、
楽しく第三者とコミュニケーションを取ることができます。
さらに、地域内の清掃活動などにも参加できれば、
施設関係者以外の人とも交流を図ることができ、
社会とともに生きる術を身につけることが可能となるでしょう。
必要なサポートを受けられる
専門のスタッフが駐在しているので、必要に応じたサポートを受けられます。
利用者それぞれに合わせ、スタッフが最適と判断した支援を行います。
各々の利用者に対して個別に設定される、
個別支援計画書というものがあるのですが、
十分な支援が受けられているか、
あるいは支援過剰で自立の妨げとなっていないかなど、
随時見直されることで、入居者の不利益となるリスクを回避しています。
デメリット
施設の絶対数が少ない
いわゆる老人ホームの数は年々増加傾向を見せる一方、
障害者グループホームに関しては、
需要に対して供給が追いついていないのが現状です。
冒頭で、障害者グループホームも増えてきていると述べましたが、
地方に行けば行くほど、やはり少ない傾向にあります。
さらに、一施設あたりの入居者数が少人数であることから、
希望する施設が定員オーバーとなってしまい、
なかなか入居できないケースも報告されています。
障害の程度が理由で入居できない場合がある
障害の程度によっては、入居できない場合があります。
「サポートを受ければ一人で生活が可能である」との入居条件は、
言い換えれば「サポートがあれば一人で生活できなくもない」という見方もできます。
そうして微妙な判断にさらされた結果、
最終的に入居不可と判断される場合も残念ながらあるようです。
多くの障害者グループホームでは、
「同施設は知的障害のある人が対象」「精神障害のある人が対象」など、
同じ障害のある人を入居対象としています。
一方で、少数ではありますが、
複数の障害のある人を対象とする施設も運営されています。
しかしながらこうした入居者の支援には、
必要とされる設備やスタッフの人数など、
受入側がクリアすべきハードルが高くなってしまうため、
入居可能な施設が限られてしまうのが現状です。
共同生活に馴染めない可能性
グループホームというサービスの特性上、
第三者との共同生活を送ることは絶対条件となります。
誰が悪いというわけではなく、相性の良し悪しもありますから、
せっかくのコミュニケーションの機会に恵まれるメリットも、
利用者やその周囲の環境によっては、
苦痛としか感じられないデメリットとなってしまう可能性もあります。
これは実際に入居してみないと判断が難しいところですが、
障害者グループホームの生活環境が、
本人にとってストレスとなる可能性は否めません。
まとめ
障害のある人とその家族にとって、
障害者グループホームの利用は、
本人の家族からの自立と新たな生き方を模索するうえでの、
最初の一歩となる期待感に満ちた選択肢といえるでしょう。
一方で同施設の絶対数の少なさや入居条件など、
事前に正しく理解しておくべきポイントも少なくありません。
障害者グループホームの利用を考える際は、
なぜ利用したいのか、利用してどうなっていきたいのか、
メリットやデメリットの観点からしっかり考えたうえで、
自治体の相談窓口に相談し、慎重に決めていきましょう。
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