■はじめに
発達障害の一種であるADHD(注意欠陥多動性障害)。
ADHDは、不注意優勢型と多動・衝動優勢型、混合型の3つに症状が分かれています。
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2022年現在、ADHDの治療薬としては、
「コンサータ」「ストラテラ」「インチュニブ」「ビバンセ」の4種類が使用されています。
今回の記事では以下、4種類の薬についてそれぞれ解説していきます。
■コンサータ
物質名はメチルフェニデート。
古くからADHDの薬として知られていた「リタリン」と同じ成分です。
しかしながら現在は、リタリンはナルコレプシーの薬としてのみ使われています。
というのも、リタリンの作用(覚醒作用)が強すぎる為です。
したがって、今はコンサータの方がADHDの薬として扱われています。
では、何が違うのかというと、主に効果時間・効果の強さです。
コンサータは「徐放剤」といって、服用後に少しずつ体内でメチルフェニデートが放出され、
長時間かけて少しずつ効いてくるような、非常に特殊な加工が施された薬になっています。

なお、それがために薬価は非常に高く、またジェネリック医薬品もないため、
薬局で数千円も払うことが数多くあります。
作用機序としては、ドーパミン再取り込み阻害薬、
つまり脳内のドーパミンを増やす性質を持った薬です。
ドーパミンが増えることによって、脳の覚醒度が上がるため、
特にADHDの特性である不注意性に効果があると知られています。
一方で、もともとの不安が増幅したり、あるいは躁状態を導いたりといった問題があることが知られています。
徐放剤とはいえ、作用が強い成分であることに変わりはなく、
副作用として頭痛や悪心(むかむかすること)などが報告されています。
同じ成分であるリタリンは、「徐放剤」ではなく、
メチルフェニデートをそのまま錠剤にしたものです。
したがって、効果が速く、そして強く現れます。
以前はこちらのリタリンがADHDの薬として使用されていましたが、
その効能の強さや依存性から、「徐放剤」としてのコンサータが生まれました。
なお、2019年からコンサータの処方も厳しくなっており、
登録されている患者のみにしかコンサータを処方できないようになっています。
また、コンサータを処方できる医師、そして薬局も制限されており、
登録された医師や薬局でしかコンサータをもらうことはできません。
したがって、もしもコンサータを欲しいという場合には、
コンサータを処方してくれる病院かどうか、
近くにコンサータを処方できる薬局があるかどうか、
前もって調べておくことが必要です。
■ストラテラ
コンサータのあとで現れた、日本で二番目のADHDに効く薬です。
最近ではADHDの薬と聞くと、こちらを思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。
物質名は、アトモキセチン。こちらの物質名もそこそこ有名ですね。
こちらは、ノルアドレナリン再取り込み阻害薬です。

ヒトの脳に対してはほかの作用をほとんど起こさないため、
比較的副作用は少ないとされていますが、
実際は悪心などの副作用が多く報告されています。
私自身、ストラテラの服薬に挑戦したことがありますが、
飲んですぐ~半日程度気分の悪さと頭痛が抜けず、
結局、効果が出てくるとされる2~3週間程度まで、
我慢して飲み続けることはできませんでした。
確か4~5日程度だけでフェードアウトした記憶があります(゚Д゚;)
ただし、コンサータが中枢神経刺激薬であるのに対し、
こちらは非中枢神経刺激薬であるため、依存性が低いことでも知られています。
もし体に合うようであれば、依存性、金額、処方制限など、いろいろな面から、
コンサータよりはストラテラを選択したほうがいいのかな、と個人的には思います。
コンサータとは性質が大きく異なり、こちらは不安や抑うつのあるケースにおいても使用可能です。
不安を解消する効果が認められるため、双極性障害やうつ症状を二次障害にもつ、
ADHD患者において、特に効果が認められるといわれています。
もともとは小児向けの薬として開発されましたが、
今では成人期のADHDも適用となっています。
ストラテラは、不注意、多動、衝動、すべてにゆるく効いていく薬とされており、
どのタイプの患者にも採用できる薬だといえるでしょう。
なお、効果を感じるまでには2週間~1ヶ月かかるとされており、
服薬をきちんと続けられるのが前提となってきます。
■インチュニブ
日本で第三の「ADHD薬」として生まれました。物質名は、グアンファシン。
こちらもストラテラと同じく、非中枢神経刺激薬となっています。
ノルアドレナリンの受容体であるa2Aに作用し、
神経伝達を増強するという性質を持った薬剤です。

ノルアドレナリンに関わる薬であるという点では、
ストラテラと共通項がありますが、作用機序がそれとは異なります。
実は、高血圧の治療薬として用いられていた「エスタリック」という薬と、
インチュニブの成分は同じものなので、副作用に低血圧がよく見られるといわれています。
従来はそちらがメインの作用だったので当然ですね。
実際、私もインチュニブを服薬していた時期がありますが、
副作用の低血圧が強く出てしまい、下50上80までの血圧が続いたため、
1ヶ月しないくらいで服薬をやめることになりました(-_-;)
もともと低血圧である方や、貧血などがある方には、ちょっと注意が必要です。
医師からその説明がないこともたまにあるので、
自身で低血圧っぽい、という自覚がある方は、医者にきちんと伝えておきましょう。
脳内物質ではなく脳(前頭葉)そのものに作用するものですので、
情動が安定するという働きがあり、怒りっぽい、癇癪を起す、
衝動がひどい、ルールを守ることができない、などのケースにおいて優先的に選択されます。
つまり、多動・衝動型のADHD患者に採用されやすい薬です。
■ビバンセ
物質名は、リスデキサンフェタミン。
2019年に承認されたばかりのとても新しい薬です。
新しく承認されたのですが、日本国内では必ずしも広く使われているとはいえません。
ただし、アメリカ合衆国では、ADHD薬の第一選択肢として既に広く普及しています。

ビバンセは、摂取すると体内でd-アンフェタミンに変化します。
この性質から、ビバンセという薬は、
覚せい剤取締法上「覚せい剤原料」として扱われるものであり、
同法による規制の対象となっています。
コンサータと同じく、作用が強いために注意が必要な薬です。
特別な資格を持った医師しか処方することができず、また調剤できる薬局も限られています。
ただし、ADHDに対する効果はコンサータ同様、強く表れるといわれています。
ドーパミンとノルアドレナリン双方の働きを高める性質を持っているからです。
もちろん、覚せい剤に酷似した性質を持つものですから、
副作用も甚大で、処方においては慎重に期すべきものではありますが、
重症例などにおいては福音をもたらす薬であるかもしれません。
但し、ビバンセも副作用として、食欲減退や不眠などが多く報告されています。
■ADHDの薬物療法のまとめ
ADHDの薬物治療に関しては、
かつて、コンサータの成分ともなっているリタリンの乱用が、
大きな社会問題をもたらした、という苦い医学界の記憶があります。
何より重要なことは、医師の指示と指導に従い、慎重に投与量を決めていき、
当事者個々のクオリティ・オブ・ライフの向上に寄与させていくことが肝要である、ということです。
現時点ではコンサータ・ストラテラ・インチュニブの3つが日本では一般的な選択肢となっています。
ビバンセについては、将来的にどうなっていくのか分かりませんが、
いずれにせよ容量・用法をよく守り、薬と付き合っていくことが大切です。
最後に、「コンサータ」「ストラテラ」「インチュニブ」「ビバンセ」これら4つの作用と、
主だった副作用を列記しておきますね。参考になれば幸いです。
作用:再取り込みの阻害によって脳内のドーパミン濃度を高める。
副作用:食欲がなくなる、睡眠が不振になる。
作用:再取り込みの阻害によって脳内のノルアドレナリン濃度を高める。
副作用:眠気、めまいなどが生じる。服用時、自動車の運転は避けた方がよい。
作用:受容体の働きを強めることによってノルアドレナリンの活動を活発にする。
副作用:眠気、鎮静などが生じる。希死念慮が発生することがある。
作用:体内でd-アンフェタミンに変化しドーパミンとノルアドレナリンの濃度を高める。
副作用:眠気、鎮静などが生じる。希死念慮、幻覚、妄想、躁状態が発生することがある。
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