はじめに
発達障害の人は、うつなどの精神疾患や、
引きこもりなどの社会不適合を生じやすい傾向があるとされており、
これらは二次障害と呼ばれています。
ここでは二次障害が生じる理由と、その兆候に気づいた際の対処法や、
予防に効果的とされる対策などを解説します。
二次障害が生まれる原因
発達障害の人は、
それぞれの障害の程度や特性が第三者の目には分かりにくく、
多くの場面で誤解されてしまうリスクが否めません。
たとえば次に挙げるような特性は、周囲の理解を得にくいため、
叱責を受けたり、低評価につながったり、
そういったことに成りかねない部分があります。
- 他の人であれば当然のようにできることがなかなかできない
- 得意・不得意の差が顕著である
- 言葉の裏を読み取れず、発言がストレートすぎる
周囲の誤解から、
精神的なストレス、自尊心の低下、集団からの孤立を招いてしまえば、
当事者は自ずと追い詰められてしまいます。
この悪循環が、さまざまな二次障害を発症する原因の1つであると考えられています。
二次障害の種類
二次障害は「内在化障害」と「外在化障害」の2つに分けられ、
それぞれ次のような症状や行動上の問題が確認されます。
内在化障害
自身の情緒的な問題として生じる障害です。
不安障害/強迫性障害/抑うつ/対人恐怖/引きこもり/心身症など
中でも、気分が落ち込み、大きな不安感に襲われ、
落ち着きを失ってイライラが続く抑うつは、
発達障害のある成人に最も顕著な二次障害とされています。
外在化障害
自身の心の中の精神的な葛藤が、第三者に向けて表現される障害です。
反抗的な言動/暴力/家出などの現実逃避/反社会的な行動(非行)
これらの問題は小学校低学年など、幼い頃から目立つ場合もあるとされています。
とりわけADHDの人の場合、
周囲の理解を得られず叱責されるなどの経験から、
全方位に対して極端に反抗的な言動に及んでしまうケースや、
反抗挑戦的障害、行為障害にまで進行してしまうケースも、報告されています。
二次障害の予防法
二次障害を引き起こさないためには、
自分自身が精神的ストレスを溜め込まない、
より快適な生活環境を整える工夫が大切です。
適度に休む習慣
発達障害の人が二次障害を回避するためには、
ストレスから解放される時間を確保するために、
適度に休む習慣が必要です。
発達障害の特性として、
作業に没頭して過集中になるなど、
作業に対して真面目に取り組み過ぎた結果、
無意識にストレスを溜め込む傾向が挙げられます。
また、自分ができない部分を周囲から指摘される場面が避けられず、
集団生活の中でストレスが蓄積してしまう傾向も見られます。
生活のリズムを整える
抑うつなどの精神疾患者は、生活のリズムが不規則、
あるいは乱れが顕著であるといわれています。
したがって、生活のリズムを整えることこそが、
二次障害防止効果につながる、と考えられるでしょう。
しかしながら、発達障害における特性の1つに、
安定した睡眠がとりづらい点が挙げられます。
自己管理ができず物事に集中し過ぎる特性から、
寝食を忘れてゲームに没頭してしまえば、
心身の疲労は自ずと蓄積します。
結果、睡眠不足から学校や職場で居眠りしてしまい、
それを叱責されてストレスを溜め込む悪循環に陥ってしまう……、
そのようなことが起こると、二次障害発症のリスクは大きく高まります。
身体面の健康状態は、心の健康状態にも影響を与えます。
家族や周囲の人の理解と協力を仰ぎながら、
規則正しい生活の実践を心がけましょう。
自己肯定感を高める
発達障害の人には、自己肯定感が低い特性が見られます。
自分に自信を持っての発言することや、人と交わることが苦手なため、
些細な事で自分自身を責めてしまい、大きなストレスを溜め込みがちです。
特に、発達障害に対する正しい理解が十分に期待できない場所では、
自ずと消極的になってしまい、自己肯定感がさらに低下してしまいます。
これを防ぐためには、つまり、自己肯定感を高めるには、
周囲の理解と受け入れてもらえる環境が不可欠ですが、
あらゆる場面でその期待をするのは難しいというのが現状です。
もしどうしても学校や職場での環境整備が難しい場合、
専門医の心理療法やトレーニングを受けることも1つの予防法といえます。
二次障害が生じた場合の対処法
二次障害が生じた、もしくはその兆候が見られた場合には、
迅速かつ確実に、以下の対処法を実践しましょう。
専門医の受診
発達障害と診断されているのであれば、
定期通院している主治医に、速やかに相談しましょう。
主治医であれば、おおむね当事者の発達障害の状態、
本人の性格などを把握しているかと思われますので、
より適切な二次障害への対処法を提案してもらえることでしょう。
定期通院を行っていない場合、
二次障害が生じた時点で、まずは専門医に相談しましょう。
専門医が見当たらない場合には、近くの心療内科で診察を受けてみましょう。
二次障害は、自己判断や家族の協力のみだと適切な対処が難しいといえます。
誤った対処から状況を悪化させないためにも、専門医の存在が不可欠です。
治療に専念
専門医への相談から治療方針が定まったのであれば、
医師の指示に従い、焦らずじっくりと治療に専念しましょう。
時には医師の指示に対して、
疑問や反感を抱くこともあるかもしれません。
だからといって、通院や服薬を自己判断でストップするのは、絶対にやめましょう。
どうしても主治医との関係性に疑問を生じる場合は、
セカンドオピニオンがおすすめです。
抑うつなどの精神疾患を生じた場合、
自己判断だけで通院や服薬を中断してしまうと、
症状の長期化や再発のリスクが高まります。
精神疾患は短期間では完治できず、
繰り返し再発する確率が高い現実を、正しく理解して治療に臨みましょう。
まとめ
二次障害は発達障害が原因で、必ず発症するものではありません。
周囲の理解と協力を仰ぎつつ、自身が工夫することで、
まずは発症しないための対策を講じる姿勢が重要です。
万が一、発症した場合も、正しい対処法と周囲のサポートで、
症状が軽減された事例が多数報告されています。
発達障害の特性そのものを「治す」ことは困難ですが、
二次障害を回避することで、日々のストレスは大きく軽減されることでしょう。
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