はじめに
発達障害をもつ子どもの就学先として、
特別支援学校と特別支援学級が挙げられます。
どちらにするかの選択に際しては、
子どもの障害の程度や特性などを見極めたうえで、
より安心して学べる学習環境はどちらなのかを、冷静に判断する必要があります。
子どもの将来に大きく影響する進学先の選択である以上、
保護者にとっても大いに悩むところでしょう。
ここでは以下、特別支援学校と特別支援学級の違いを比較しつつ、
それぞれのメリット・デメリットをご紹介します。
特別支援学級と特別支援学校の違いを知る
まずはそれぞれに関する基礎知識と、その違いを確かめておきましょう。
特別支援学校とは
特別支援学校は、心身に障害を持つ、あるいは大病を患う、
通常の通学が難しい子どもを受け入れる教育施設です。
幼稚園、小学部、中学部、高校部があります。
園児、児童、生徒それぞれの特性に配慮しつつ、
年齢に応じた学校教育と、自立に必要な知識や能力を身につけさせる指導を行います。
特別支援学級とは
通常学級での学習が難しい子どもを対象に、
通常の小・中学校内に設置される学級です。
小人数制で、それぞれの学習能力に合った学習指導が行われます。
障害の程度によっては、特定の学科に関してのみ、
特別支援学級で授業を受ける場合もあります。
どちらに通わせるかの判断基準について
どちらを選ぶべきなのかを見極める上での一般的な判断基準として、
以下の2つのポイントが重視されています。
日常生活の自立の程度
ここでは子ども自身が単独もしくは補助を得ることで、
食事、排せつ、着替え、衛生管理、意志の伝達などが行えることを、
「日常生活の自立」と表現します。
これらが困難な場合には特別支援学校を、
これらは可能でも学力の遅れが見られる場合などは特別支援学級を、
選択するのが、1つの判断基準と考えられます。
授業への参加が可能か
通常の学校もしくは特別支援学級では、学力向上を主な目的に授業が行われます。
参加の可否の見極めに際しては、勉強についていけるかどうかだけでなく、
授業中落ち着いて座り続けられるかなどが、主な判断基準となります。
聴覚過敏で教室内の声や音に耐えられない、
大人数の中に居続けることに対する不安感や不快感など、
それぞれの障害の特性を考慮する必要もあります。
授業には参加できるが、何もしていない状況となるのであれば特別支援学級、
参加が難しい場合には特別支援学校、
というのが、1つの判断基準と考えられます。
特別支援学校のメリット・デメリット
メリット
特別支援学校の教員は、教員免許に加え、特別支援学校教育免許が必要です。
発達障害に関する専門的な知識が豊富で、
障害児・障害者との接し方を身につけている教員が多く、
それぞれの特性に合わせた細やかな対応が期待できます。
またバスによる送迎や施設内のバリアフリー化など、
障害を持つ子どもたちが、より安全に集団生活を送るための環境も整えられています。
デメリット
通常学級の子どもや学年の子どもと交流できる機会がほとんどありません。
1クラスの児童(生徒)数は数名程度で、
クラス替えも実質できないため、交友関係が狭くなってしまいます。
また生活上の自立を主目的とする指導のため、
学力向上を目的とした授業はあまり行われません。
ちなみに授業内容としては、
「読み書き」「お金の数え方」など、実用的なものが中心です。
特別支援学級のメリット・デメリット
メリット
通常学級に通う子どもと交流できるのが、最大のメリットと言えるでしょう。
給食や休み時間を一緒に過ごし、
教科によっては通常のクラスで授業を受けられ、
学校における集団生活を体験できます。
特別支援学級での授業は、個々の学力に応じた個別指導が行われ、
苦手科目に集中して取り組むことも可能です。
デメリット
特別支援学級の教師には、特別支援学校教員免許は必要ありません。
発達障害に関する専門知識に乏しい教師が担任になった場合、
十分な理解や適切な対応が得られるとは限りません。
また通常学級の子どもたちの中に身を置くことで、
少数派になってしまう可能性があります。
通常学級に入るとき、自分が周りとなにか違うということに、
子ども自身が劣等感を覚えるケースも報告されているため、
周囲の大人たちのケアが大切です。
まとめ
特別支援学校は「生活上の自立」を、
特別支援学級は「個々に合わせた学習教育」を、
それぞれ主目的とする指導が行われます。
発達障害を持つ子どもの就学先を正しく見極めるには、
子どもが安心してのびのびと学習できる環境かどうかを、
総合的に判断する姿勢が重要です。
子どもにとって心豊かな学校生活となるのはどちらか、
その先の未来はどうなるのか、具体的にイメージしてみましょう。
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