ディスグラフィアとは?
ディスグラフィアとは日本語で書字障害といいます。
書字障害、つまり知的に遅れが生じていないにも関わらず、
書くことの難しさを抱える学習障害です。
他の能力は平均的であるにも関わらず、
「書く」ことのみが苦手なディスグラフィアの子は、
他の遅れは生じていないことから、
「努力していないから」「怠けているのか」「しっかり勉強しろ」などと、
責められることがあります。
代表的な症状としては、
- 文字を書くときに一画足りない、もしくは一画多い
- 書いた文字が行やマスからはみだしてしまう
- 句読点をつけ忘れてしまう
などがあげられます。
ただ、詳細にみるとそれぞれの子どもにとって困りごとの背景にはいろいろあります。
例えば、書字と一言にいっても書く際には座って、姿勢を安定しなければいけません。
他に、鉛筆や消しゴムを持つために、手先を器用に動かさなければいけませんし、
肩の筋肉も安定している必要があります。
また、ディスグラフィアを抱えている子には、
発達障害などの診断を受けていることや、その可能性を否定できない状態にもあります。
例えば、ADHDの症状がある場合、
集中できずに他のことに気を取られてしまったら、
そもそも課題に取りくむことができません。
他にも、細かな部分に注意を満遍なく払うことが難しいため、
漢字の部首を入れ替えて書いてしまう、一画抜けている、
細部を間違って書いてしまうことがあります。
さらに、同時作業が苦手なため、板書が書きとれず、
漢字を間違って覚えてしまうこともあります。
対象となる子がどこでつまずいているか、何を苦手としているかを考えることが重要です。
主な原因
例えば、以下のような原因が考えられます。
視覚情報処理が難しい
英語と違って日本語は漢字のように、複雑になりたっている文字が多いです。
そのためそれぞれのパーツ(部首)をうまく構成することが難しいと考えられます。
音韻処理の困難さ
特定の文字がどの音と対応しているか、という処理のことです。
「あ」が「a」と対応することを認識することが難しいと感じる場合があります。
「パソコン」であれば「パ」「ソ」「コ」「ン」と4つの文字で1つの単語を作っていますが、
一つの単語としてとらえることの難しさもあります。
症状例
ここで事例を見てみようと思います。
事例1
Aくん。
小学校に入学し、ひらがなや漢字を学習していくうちに、
マスにうまく字がおさまりきらないことがわかった。
字も汚く、「あ」が鏡のように反転してしまうこと、
「玉」と書きたいけど「王」と書いてしまい点を忘れてしまう。
お父さんは「きちんと細かいところまで漢字を見て、間違えないように」と注意するも、
Aくんにとっては「きちんと細かいところ」がわからない。
事例2
Bくん。
小学2年生。書くスピードが速く、板書も間に合う。
ただし、手元を見ずに書き落ち着かない。ミミズが歩いたような字になってしまう。
お母さんに「もっとゆっくり書きなさい!」と注意されても、
泣いてしまい、余計に早くなってしまう。
お母さんが何回注意しても直らないため、
ついにBくんは漢字を書くことに苦手意識が強くなってしまい、
抵抗を示すようになってしまった。
それに対してお母さんはさらに「きちんとノートをとりなさい」と注意するため、
負の連鎖に陥ってしまった。
このことによってBくんは「文字がうまく書けない」から、
「文字を書く意欲がわかない」という状態になってしまった。
ディスグラフィアの支援
ディスグラフィアは、脳の障害といわれ現在のところ、根本的な治療はありません。
そのため、その子の特性に合った支援を見つけていくことが重要です。
Aくん、Bくんで見た事例のように周りの人がただ叱っても、
子どもたちのためにはならないと考えていいでしょう。
1.似たような文字を間違えてしまう
似た文字を間違えてしまう場合、
その似た文字の違いに気づくことが難しいかもしれません。
例えば、「ら」と「う」、「大」と「太」。
これらの場合、どこで間違えたかを本人と一緒に確認し、
間違えた箇所を赤く塗ることや太くすることで、目立つようにしておくといいと思います。
2.文字のバランスが悪い
文字を書く際には、マスから飛び出すこと、
一画だけ大きく書いてしまい不格好となってしまうことがあります。
この場合、例えばマスを細かく分け、
どの部首がどのマスに占めるかを考えていくといいかもしれません。
3.心理的なサポート
何よりも、面白い、できた!楽しい!といった感覚を味わえるように、
その子の強みを生かせるような場を設定する工夫が必要です。
肯定的にほめることで本人のやる気に繋がります。
まとめ
ディスグラフィアは、本人の努力不足、怠け、とみられてしまうことも多いため、
診断することがとても難しい障害です。
普段から周囲や注意深く関わることでその兆候を見つけ、
困り感に共感することで、早期にディスグラフィアを発見できるのではないかと考えます。
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