はじめに
自立訓練(生活訓練)とは、体調が安定しない、外出したくてもできないなど、
自立したくてもできない人を、訓練やカウンセリングを通じて支援するものです。
集団社会におけるさまざまな不安のため、一般的な勤務が続けられない人を対象に、
ひとりひとりの希望を聞き取り、目標を設定してサポートします。
発達障害のため、病院、施設、家族の介助を受ける生活を続けながらも、
「いつかは働きたい」と願う人は、少なくないことでしょう。
こうした対象者が、地域社会での生活や就労に向けて、
必要とされる基礎的な能力を身につけることを目標に、
自立訓練(生活訓練)では、さまざまなプログラムが準備されています。
この記事では、自立訓練(生活訓練)に関する基礎知識と、
利用者が訓練施設で過ごす一日を、事例ベースでご紹介します。
自立訓練(生活訓練)というサービスを全く知らない人から、
「興味はあるし、参加してみたいけれど……」と迷っている人まで、
ぜひご一読いただければと思います。
押さえておきたい自立訓練(生活訓練)基礎知識
まずは自立訓練(生活訓練)に関する基礎知識を、
みなさんと一緒に確かめておきましょう。
この訓練は、大きく2種類に分けられます。
訓練の種類
機能訓練
身体上のリハビリテーションが主体の訓練です。
生活訓練
健康管理・金銭管理などの自己管理、およびコミュニケーション能力の獲得など、
生活スキル中心の訓練です。
サービスを利用できるのは、18歳以上65歳未満の障害者などです。
例として、以下のような人が自立訓練(生活訓練)の対象となります。
- 就労するうえで一定の支援が必要な精神・発達・知的などの障害をお持ちの方
- 入所施設もしくは病院を退所(退院)し、地域生活に移行しようとしている方
- 特別支援学校を卒業し、生活能力の向上を目指している方
など
また、訓練施設(事業所)も、大きく分けて3つあります。
訓練施設(事業所) の種類
通所型
自宅から通所するスタイルで利用できます。
午前中から夕方まで訓練を受ける、障害が比較的軽度な人向けの施設です。
宿泊型
日中働いている人や他の福祉サービスの利用者に、夜間の住まいを提供し、
帰宅後に訓練や支援を行います。
一人暮らしに不安があり、共同生活が可能な人が対象のサービスです。
訪問型
利用者宅にスタッフが訪れ、基本マンツーマンで訓練や支援をおこないます。
施設へ通うことができない、大勢の人と一緒に過ごすことがむずかしい、
やや障害が重いとされる利用者向けです。
通所型と組み合わせての利用が可能なサービスもみられます。
そのほか、就労移行支援や就労継続支援などと組み合わせて訓練を行う、
多機能型施設もあります。
こちらは将来的に一般就労を目標とする人が対象です。
ある施設で過ごす一日をご紹介
では早速、とある「通所型」の施設における、ある一日のスケジュールをご紹介します。
それぞれのカリキュラムが持つ意味合いも含め、掘り下げた解説をお届けします。
ちなみに多くの通所型施設では、学校の時間割のように、
曜日別に異なる訓練内容が用意され、変化を持たせています。
規則正しい生活習慣を身につけるべく、毎朝朝礼が行われます。
続いては自分や周りの生活環境を清潔に整える大切さを、
理解するために、自ら清掃作業に取り組みます。
障害者と呼ばれる人々は、急激な体調の変化が生じるケースも多く、
始業時の健康チェックも日課となっています。
これらに費やす時間は20分程度のため、サクサクとこなす必要があります。
物事の処理能力を向上させるべく、
利用者にとってはややタイトと感じられる時間配分となっています。
いきなり仕事(作業)に取りかかることが苦手な利用者は数多くいます。
そのため、まずは簡単なアイスブレイク、脳トレ通して、
その日の訓練を無理なくスタートできるよう、プログラムに入る前に、
気持ちの整理、心の準備を行います。
他の利用者と一緒に、ゲームやレクリエーションを楽しむことで、
緊張の緩和とともに、一緒に研修を受ける仲間との、
コミュニケーション力を身につけることができます。
学校の休憩時間と同じく、
限られた休憩時間内にトイレを済ませるなど、
自己管理の訓練の時間でもあります。
あらかじめ決められた時間割のプログラムで、訓練を行います。
小中学校の授業(1時限)より少し長い時間設定は、
まずはこの時間から集中力を持続できるよう、
段階を踏んで訓練する目的に基づいています。
メインプログラムで頑張った後は昼休みです。
利用者の食事は、持参したお弁当・外へ買いに出る・家族が届けるなど、
立地条件や施設の規模や設備などにより、その形態が変わってきます。
時間内に食事を済ませ、午後のカリキュラムに備えるための休息をとるなど、
自己管理の方法について、昼休みを通じて学ぶことができます。
昼休みが終われば、メインプログラム再開です。
お昼休憩前のメインプログラムと同じく、時間は1時間となっています。
メインプログラムの後は、利用者にも疲れが見え始めるため、
必ず休憩を入れます。先に述べたように、休憩時間の過ごし方を学ぶのも、
自立訓練(生活訓練)において大事な学びです。
個別学習・カウンセリング・興味がある分野の研究・自分自身と向き合うなど、
利用者が自らの意志で過ごす時間です。
自分1人で決められない場合は、スタッフがサポートしつつ、
自発性・決断力・コミュニケーション能力などを学びます。
プログラム自体はこれで終了のため、最後の休憩になります。
お手洗いに行ったり、利用者同士でおしゃべりしたり、
今日もお疲れ様、と言葉を交わすこともあります。
その日に体験したカリキュラムで学んだこと、感じたことなどを振り返り、
支援者と利用者で共有します。その後、次回の利用日を確認し、終了となります。
実質滞在時間は6時間と、
一般的なフルタイム勤務よりは、いくぶんか短い設定になっています。
緊張と疲労から訓練の効果が低下しないよう、
タイムスケジュールには、細やかな配慮がなされています。
まずはこの生活サイクルに適応できるようになることで、
一般的な就業を目的とする、次の段階が視野に入ります。
まとめ
心の中では常に「自立したい」と願いつつ、
思い通りにならない自身の身体と心に、「いらだち」が隠し切れない人は、
障害者と呼ばれる人の中に数多くいることかと思います。
「今度こそ仕事を続けてみせる!」と誓いつつも、
「もし次も続かなかったら、周囲の人にまた迷惑をかけてしまう」との葛藤から、
なかなか次の一歩が踏み出せない方もいることでしょう。
自立訓練(生活訓練)は、初めの第一歩として最適な福祉サービスです。
毎日通わなくても、少しずつ通うことで、生活リズムを整えていくことができます。
受給者証を取ればほとんどお金を払わずに利用できるサービスでもあります。
まずは行動するところから。あなたの挑戦を応援しています!
コメント