子供のうちに発達障害が見つかった場合、
療育、あるいは発達支援と呼ばれる介入が行われることが一般的です。
様々な考え方と技法がありますが、療育とは、
適切な発達を促して社会生活を大過なく送れるようにするための援助法の総称です。
ここでは、5つの技法を紹介します。
ABA(応用行動分析)とは?
ABAは古くは行動療法と呼ばれたものの発展形の一つであり、
スキナーという行動主義心理学者の思想と技法、
すなわち行動分析学の発展と応用として生み出されたものです。
実践レベルでは、非常に広く療育の世界に導入されている技法なのですが、
中核になるのは「オペラント条件づけ」と呼ばれる心理学的概念です。
ある行動は(誉め言葉などで)強化されれば増え、
逆に強化されなければ現れなくなっていく、という考え方をします。
つまり、子どもの問題行動に対する基本的なアプローチは「無視」です。
(特に親が)子供の問題行動に逐一反応すると、
逆に問題行動が増えてしまう、と考えるからです。
逆に、望ましい行動を子供が取ったときは、
誉めるなどの態度を積極的に取ることで、その行動を強化していきます。
もちろん誉めることだけが全てではなく、
成功体験を積ませることで内部的な強化を蓄積させていく、
といったような要素も含まれています。
TEACCHとは?
TEACCH、ティーチは応用行動分析と並ぶ療育の主要技法の一つです。
自閉症者とその家族のための支援プログラムとして、
アメリカで生み出されたものですが、
まず、TEACCHの実践者たちは、
発達障害者が「問題を抱えたひとびと」であるという捉え方を基本的にしません。
自閉症の世界は独自の色彩を持った豊かな文化で、
健常者の世界と並び立つものである、という考え方に立脚します。
実際、発達障害者がある面においては、
健常者よりも優れた特性を持っているということが古くから知られていました。
したがって、周囲の人間たちが自閉児の世界を理解するように導きつつ、
そして彼らの長所を伸ばしつつ、
また一般の世間に適応が可能になるようにするために、
彼らが抱えている課題を割り出し、それに関する実践と応用を考え、
療育プログラムを組んでいきます。
最終的には、ノーマライゼーションに結び付けられるのですが、
いわばそれは視覚障害者の白杖や足の不自由な人の車椅子のようなものである、
という考え方をするのがTEACCHの基本的なロジックです。
認知行動療法とは?
認知行動療法というのは、
人間の行動と認知の両面にアプローチする心理療法の一種です。
もともと発達障害のために開発された技法というわけではなく、
また、認知行動療法というのは総称なので、
この名の下に様々な個別的技法が存在しますが、
総論としては特に不安の低減・解消に有効であることが知られています。
自閉スペクトラム児は一般論として、
健常児よりも不安の症状を示しやすい(具体的には、4割ほどが不安の問題を示す)、
という事実が知られていますので、
認知行動療法を用いた不安の緩和が、
応用行動分析やTEACCHによる療育プログラムの中でも、
補助的に用いられることがよくあります。
また、自己肯定感をもたらす効果も知られています。
感覚統合とは?
感覚統合療法は、アメリカの作業療法士だったエアーズという人物が、
もともとはLDの子供に対する学習法として考案した技法です。
そこから発展し、ADHDや自閉スペクトラムにも応用されるようになりました。
感覚統合療法ではまず、
発達障害の子供は健常者と比べ「過敏である感覚」や「鈍感である感覚」があるなど、
感覚にバランスの悪いところがあるのだと考えます。
感覚と言うのはいわゆる五感のことでもありますが、
この療法で重視されるのは触覚、平衡感覚、そして固有覚の三つです。
固有覚とは自分の動きをコントロールするための人間が持つセンサーのことですが、
発達障害者ではこれがうまく働かない、とされます。
感覚統合療法の具体的な実践はプレイセラピーの形を取りますが、
言葉の遅れが目立つ児童や、知的な遅滞の大きい児童よりも、
一般的に「育てにくい子」と言われるタイプの、
発達障害児に対して有効的である、と考えられています。
箱庭療法とは?
箱庭療法はユング派心理学の治療者たちが生み出し、
また日本でも導入した、国内だけで半世紀以上の歴史を持つ、
比較的歴史の長い技法で、広義にはプレイセラピーの一種です。
療育にも応用されますが、発達障害専用ではなく、子供専用でもなく、
技法そのものは(ユング派心理療法家たちの独占物というわけでもなく)、
広く用いられているものです。
砂の入った木箱の中に、
事前に色々と用意してあったミニチュアの人形やおもちゃなどを並べていき、
箱庭を作らせる、というのが基本的な箱庭療法の構造ですが、
これ単体で療育をするということはまずなく、
補助的に利用するのが基本です。
何よりも優れているのは遊び的な要素が強いので実施が容易であるということですが、
これ自体に治療的効果がある程度はあるといわれていますし、
また児童に対する心理アセスメントの手段としても有効であるとされています。
以上、有名な療育方法として5つご紹介しました。
今後、それぞれについての説明記事も挙げていきますので、
ぜひご覧いただければ幸いです。
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