はじめに
今回は、発達障害者支援における高齢期支援に関する実態調査について、
ポイントを押さえ、できるだけわかりやすくお伝えします。
当事者ならびに家族などの高齢化に伴い、
困りごとの増加が避けられないのが現状です。
より的確な支援を届けるべく行われた、
現状を知るための調査の内容と結果について、
ここで一緒に検証していきたいと思います。
事業目的
同事業は高齢期の発達障害者およびその家族などの現状を見据える目的で、
厚生労働省が設けた事業主体により実施されました。
当事者の声に耳を傾け、最善策を検討から実践するための基礎資料を作成すべく、
アンケートならびにヒアリング調査が行われました。
▼ここがポイント
国民全体の高齢化が進む中、発達障害者支援センターには、数多くの相談が寄せられています。
発達障害者とその家族にとって、高齢化に伴う生活上の課題や支援の難しさは、
いずれもクリアすべき切実な問題です。
★発達障害者支援法の一部改正
2016(平成 28)年 8 月に、発達障害者支援法が一部改正されました。
ライフステージに応じた切れ目のない支援体制の再構築が急務である、
との判断に基づく、大きな一歩だといえるでしょう。
この作業を進めるためには、
全国各地の高齢期の発達障害者の現状を確認する必要があり、
実態調査が実施されることとなりました。
事業概要
アンケート・ヒアリング調査および結果の分析を行うため、
有識者と事務局(国立のぞみの園)で構成する「研究検討委員会」を設置しました。
★アンケート調査
以下それぞれを対象に、高齢期発達障害者(可能性を含む)の人数・年代・性別など、
メールおよび郵送による調査を実施しました。
- 全国の発達障害者支援センター97ヵ所(すべて)
- 全国地域包括・在宅介護支援 センター協議会加盟事業所 2,738 か所(抽出)
- 社会福祉協議会 59 ヵ所(抽出)
★ヒアリング調査
高齢期発達障害者に関する相談内容・支援内容・課題などを、
WEB 及び電話などを通じて明らかにしました。
※アンケート調査の結果から抽出した機関 14 ヵ所が対象。
事業実施結果および効果
設置した研究検討委員会が公表した同事業の実施結果および効果は、
要約すると次のとおりでした。
★アンケート調査の結果
調査の窓口となった各支援機関には、
発達障害の診断がある高齢者に関する相談が、一定数寄せられていました。
診断別ではASDが最も多く、年代別では65~74歳が全体の7割を占めていました。
★ヒアリング調査の結果
発達障害者支援センターに寄せられた相談は、
同居家族や当事者から、家庭での対応について、
助言を求める内容が多くを占めていました。
対して全国地域包括や社会福祉協議会には、独居の本人から、
生活困窮の支援に関するものが中心となっていました。
★同事業の効果と今後の課題
以下の現状と課題については、すでに各機関で認識されていたことが確認できました。
- 全高齢期発達障害者に関する研修が不十分かつ、連携体制が相互間で構築できていない。
- 自期間のみでは対応できないケースへの対応が、早急にクリアすべき課題である。
事業主体
独立行政法人国立重度知的障害者総合施設のぞみの園
〒370-0865
群馬県高崎市寺尾町 2120-2
TEL 027-625-1504(代表)
E-MAIL webmaster@nozomi.go.jp
まとめ
高齢期発達障害については、これまでほとんど調査が行われていませんでした。
同事業を通じ、発達障害者支援センターだけでなく高齢者支援機関などにも、
多くの相談が寄せられていることが判明しました。
今回の調査結果を踏まえ、現状を大きく改善する必要性がクローズアップされました。
まずは各機関が高齢期発達障害について、より一層認識を高めることが不可欠でしょう。
次に相互連携を積極的に、より的確な支援を提供するできる環境の構築が望まれます。
当事者の生きづらさや家族の負担が軽減される、さらなる支援体制の構築が期待されます。
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