はじめに
発達障害と知的障害はどう違うの?
知的障害のひとつが発達障害、もしくは発達障害のひとつが知的障害?
文字にすると素朴な疑問ですが、みなさんは正しい見識をお持ちでしょうか?
ここでは知的障害に関する基礎知識および、発達障害との相違点など、
ぜひ踏まえておくべきポイントをご紹介します。
知的障害とは
知的障害とは、日常生活上必要とされる能力が制限されているがゆえに、
社会生活に上手く適応できない状態の障害を指します。
どれだけ一生懸命勉強を頑張ってみても、思うように成果が得られない場合、
その原因として知的障害が潜んでいる可能性が考えられます。
知的障害というと、重度知的障害者の症状を思い浮かべがちですが、
実際の知的障害者における約半分は軽度または中度の知的障害者です。
年齢を重ねるにつれ、自己責任で対処すべき事象が増えると、
今まで保護者にしてもらっていたことを一人で行わないといけなくなり、
困り感が大きくなる結果、本人や周囲が知的障害に気づくケースは少なくありません。
そのほか、表面上こそ障害が感じられなくとも、
複雑な会話や暗算が極端に苦手など、
臨機応変かつ迅速な対応ができないという症状がある方も見られます。
ひとくちに知的障害といっても、いろいろな症状がありますので、
ぜひ当記事を参考にしてください。
知的障害の定義
以下に該当する場合、知的障害であると判断されます。
知的能力が低い
個別実施した知能検査で、IQ(知能指数)が平均よりも大きく低い。
適応能力が低い
社会生活上必要とされる能力が、同年齢の他人と比較して低い。
身辺の自立、対人関係、仕事・家事・育児、金銭管理などに支障が見られる。
障害が発達期に現れている
上記の状態が何らかの原因で、発達期(おおむね18歳)までに生じている。
※認知症や頭部負傷などによる知能・適応能力低下の場合、知的障害とは判定されません。
知的障害の特徴
知的障害の特徴には大きく個人差が見られますが、
多くの人に共通する特徴は以下の通りです。
相手の言葉の意味が理解できない
難しい単語の意味がわからないだけでなく、早口を聴き取れない、
複数の内容を1度に告げられると混乱するなど、
言葉のコミュニケーションに支障が見られます。
対応・工夫
文章を短く区切り、ゆっくりとした口調で伝える。
身振り手振り、絵・図・写真・メモなど、視覚で確かめられるツールを用いる。
自分の考えを上手に伝えられない
知っている語彙数が少ないため、自分の想いや考えを上手く言葉にできません。
話している途中に自分が話し始めた内容を忘れてしまい、迷走から支離滅裂となり、
自らが混乱してしまいます。
対応・工夫
言葉に詰まった状態に陥ったとしても、急かすことなく本人が話し出すのを待つ。
問いかけは「なぜ?」ではなく「どっち?」と、選択肢を提示する。
直前に本人が語った内容を復唱して伝えることで、話の脱線を防ぎつつ、内容を確かめる。
状況に則した行動ができない
複数の物事を同時に進めることが苦手で、頭が混乱してしまう場面が見られます。
また予期せぬイレギュラーな出来事が生じた場合、対応策が思いつかず、
上手く自己処理できません。
対応・工夫
やるべきことを短く簡潔に伝え、可能であればメモ書きで優先順位を伝える。
※本人が自身の苦手な部分(弱み)を冷静に理解する姿勢も大切です。
独力で対応できない場合には、周囲の人に助けを求められる環境を整えることで、
本人が自身のペースで着実に成長できる期待値が高まります。
発達障害とは・知的障害との相違点
続いては先に触れた知的障害に関する内容を踏まえ、
発達障害に関する基礎知識を確かめてみましょう。
以下の内容から、双方の相違点を正しく理解いただければと思います。
発達障害とは
広義の精神障害のひとつにとされる発達障害は、先天的な脳の障害です。
何らかの原因で脳機能の一部が上手く働かないため、
さまざまな障害や特性が生じると考えられています。
1人が複数の発達障害を持つケースもみられ、
同一の障害を持つ人同士でも大きな個人差が見られます。
必ずしも知的障害を伴うものではなく、
発達障害と知的障害は医学的に異なる障害と位置づけられています。
大きく3つに分類される発達障害
発達障害は以下の3つに分類され、それぞれ次の特徴が確かめられています。
広汎性発達障害(自閉スペクトラム症)
自閉症、アスペルガー症候群などの自閉スペクトラム症と、
ほぼ同意語として用いられています。
主な特徴として、対人関係やコミュニケーションが困難、
興味の対象や行動に偏りが見られる、などが挙げられます。
症状の程度や特性により、いくつかの診断名に分類されますが、
大きく1つの発達障害の単位であるとされています。
学習障害(LD)
読む・書く・計算する・話すなど、特定のことが極端にできない障害です。
知的発達自体には問題が見られず、知的障害とは区別されます。
注意欠陥多動性障害(AD/HD)
発達年齢にそぐわない、以下の特徴が強く認められ、かつ頻繁に生じる障害です。
- 1つの活動に集中できない
- 些細なことで気が散ってしまう
- 物を紛失したり忘れやすい
- 順序だてて物事に取り組めない
- じっと静かにしていられず、大声で動き回ってしまう
- 待つことができず、ルール無視で第三者の邪魔をしてしまう
など
まとめ
ここまでご紹介した内容から、発達障害と知的障害とでは、
それぞれの判定・認定の基準が異なることが、理解いただけたかと思います。
〇 発達障害のある人が、知的障害も持ち合わせているケースがある。
× 知的障害のある人は、全員が発達障害である。
この重要なポイントを、正しく踏まえておく必要があります。
ちなみに具体的なパターンは、次の通りです。
- 知的障害のみ
- 知的障害であり、広汎性発達障害でもある
- 知的障害であり、注意欠陥障害でもある
- 知的障害であり、広汎性発達障害であり、注意欠陥障害でもある
- 1つの発達障害のみ
- 複数の発達障害がある
「知的障害であり、学習障害でもある」というパターンは存在しません。
知的障害と発達障害は別の概念であり、
そのために診断名や利用できる制度、障害者手帳なども変わってきます。
正しく理解をして自身に必要な情報を取捨選択してくださいね!
コメント