チック症、トゥレット症候群とは?
チック症とは、なんどもうなずいたり、肩をすくめたり、唸り声をだしたりなど、
本人の意思に反して、勝手に声が出てしまったり、体が動いてしまったりする症状です。
その子が好きなこと、例えばゲームだったり、サッカーだったり、
そういったことをしているとき、チックはあまり出ません。
しかし、日常生活で特に意識していないとき、思いがけないときに出てしまいます。
努力しても止められないのがチックの症状です。
別のことに集中すると症状がおさまるけど、
しばらく経過すると、また出てきます。
チックは、『音声チック』と『運動性チック』に分けられます。
音声チックとは?
音声チックは、「単純音声チック」と「複雑音声チック」の2つにわけられます。
単純音声チックとは、短い時間に断続的に音を出すことで、
例えば咳払いや唸るなどの行動をすることです。
複雑音声チックとは、一つの言葉や組み合わされた言葉を使うことで、
「馬鹿」「死ね」などの汚い言葉を繰り返すこと(汚言症)や、
他人や自分の発した音声などを繰り返すことが例として挙げられます。
運動性チックとは?
運動性チックは、体の一部をぴくぴく動かすなど、動作を伴うチックです。
さらに運動性チックには、「単純運動チック」と「複雑運動チック」があります。
単純運動チックというのは、まばたき、鼻をひくひくさせる、
肩をすくめるなどの一つの動きを繰り返すことを指します。
複雑運動チックというのは、人や物にさわる、においを嗅ぐなど、
体のいろんな部分が同時に動くことを指します。
人を非常に驚かす複雑運動チックに、汚動症という症状があります。
汚動症の症状としては、他人の胸や性器に手を伸ばしたり、自分の性器をつかんだり、
チックを知らない人にとっては大変驚き、困惑することであり、
周囲への迷惑にもなりかねない困った症状です。
トゥレット症候群について
トゥレット症候群は、1~2種類の運動性チックにはじまり、
やがてチックがあらわれる部位が広がります。
さらに音声チックも加わり、
その状態が1年以上続くとトゥレット症候群と診断されます。
他のチック症状に比べると症状の数が多く、持続時間も長く、
生活上の問題も多く抱え込みやすくなります。
ただし、重症度はチック同様、人それぞれとなっています。
トゥレット症候群は複数の運動性チックや音声チックが出るため、
チックより目立ち、人目をひきやすいです。
そのため、本人は症状そのものよりも、
周りとの関係性で辛い思いをしていることが多いといえます。
チックやトゥレット症候群の特徴
リラックスしているときに出る
チックはくつろいでいるときに症状が出やすく、
主に家にいるときに出るため、家庭に問題があるのではないか、と、
誤解を受けやすいのが特徴です。
不安や緊張が大きい時に出る
特別な行事が控えていると、不安や緊張がいつもより高まり、
症状が出やすくなります。
例えば、遠足、運動会などの学校行事などです。
夢中になっているときは出にくい
好きなことをしているときや、集中して何かをしているときには、
症状が出にくいといわれています。
また睡眠中にもあまり症状が出ません。
原因
子どもにチックがあると親は驚き、
「自分の育て方に問題があるのではないか」と考えてしまいがちです。
しかし、チックが出るか出ないかの原因は、
家庭環境や育て方でなく、
生まれつきチックが出やすいかどうかであり、
脳の性質に関係があるといわれています。
そのほか、遺伝も関係がありますが、
親がチックだからといって、必ずしも子どももチックになるとは限りません。
但し、ストレスの多い出来事があるとチックが始まり、ひどくなることもあります。
子どもがチックになると親が焦ってしまうのは、仕方のないことでしょう。
特に、先に述べたような汚言症や汚動症など、
他人に迷惑をかけるかもしれない症状があると、
本人も家族も、困ってしまいます。
結果として、親はチックを注意してしまう、もしくは、
注意してはいけないと我慢する、といったことがおこり、
子どもはそれによってストレスを感じ、さらにチックが増え、
親はなおさら不安になってしまう……という、
悪循環が生じる可能性があります。
心理的な要因が症状に関連することはありますが、
子どものストレスをすべて取り除くことは難しいのが正直なところです。
子どもは親のストレスを敏感に感じ取ります。
少しでも親が焦らず対応することで、
悪循環を断つことができるかもしれません。
支援について
チックを持つ本人がするといいことと、逆にしないほうがいいことをまとめました。
するといいこと
- 定期的に運動する
- 深呼吸や音楽で心を落ち着かせる
- 自分の好きなことや集中できることを見つける
しないほうがいいこと
- 一人で我慢する(信頼できる友達や先生、親に相談しましょう)
- 自分や親を責めること
次に、周囲がするといいことと、逆にしないほうがいいことをまとめました。
するといいこと
- 「自分はダメな子だ」と自己評価が低い場合が多いので、なるべく肯定的にかかわる
- 課題や勉強が遅れる場合があるので、本人に合った学習のペースを提案する
しないほうがいいこと
- 「チックをやめなさい」と注意する(コントロールができません)
- チックのことを馬鹿にしたり、からかったりする
まとめ
チックの症状が激しければ激しいほど、長引けば長引くほど、
家族は悩み、焦ってしまうかもしれません。
時に、孤立感を抱えてしまうこともあるでしょう。
そのようなとき、同じ障害をもつ患者、家族の会を利用するという方法があります。
同じ悩みをもつ人との交流は、
生活する上で励みになるだけでなく、
チックやトゥレット症候群について理解を深めることもできるでしょう。
まずは焦らないことです。
子どもにチックと思われる症状がみられた場合は、
専門機関を受診し、その後の指示を仰ぐようにしてくださいね。
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