はじめに
日本では「障害者差別解消法」や、
「改正障害者雇用促進法」の施行により、
事業者に対し、合理的配慮の提供義務が課されています。
この記事では、発達障害の人に対する、
職場における「合理的配慮」に関する説明と、
現場で実施されている具体例をご紹介します。
職場に求められる「合理的配慮」とは?
合理的配慮とは、
障害のある人が障害のない人と平等に過ごせるように、
さまざまな場面で発生する困難を取り除くための配慮を指しています。
対象者が直面している困難や周囲の環境に応じて、
必要となる合理的配慮は異なるため、
当事者に合った個別対応が必要です。
職場における合理的配慮のプロセス
職場における合理的配慮は、
困りごとに応じた個別の調整のため、
当事者の状態と周囲の環境により、必要となる内容が異なります。
そのため配慮が必要な本人による意思表明と、
配慮を実施する事業者側の間で、十分な対話と合意形成が重要です。
次のプロセスを経て、合理的配慮を実施するのがポイントです。
本人もしくは保護者・介助者からの相談
合理的配慮は、それを必要とする本人からの意志表明が必要です。
本人側と事業者との対話
発達障害など目に見えにくい障害のある人に対しては、
本人のプライバシー保護の観点からも、事業者側には慎重な対応が望まれます。
双方合意の上で実施
どのような困りごとに対し、どんな配慮が可能なのか、
双方が合意していることが重要です。
定期的な見直しと改善
一旦実施した配慮はそのまま継続するのではなく、
定期的に内容や程度を見直し、改善する対応が求められます。
職場における「合理的配慮」事例集
事例A
聴覚過敏で周囲の人の話し声が気になり、仕事ができない。
両耳を塞いで動けなくなってしまうときもある。
合理的配慮A
第三者の往来が極力少ない部屋で勤務可能な環境を整え、
仕事中の耳栓もしくはイヤーマッフルの着用を許可した。
事例B
矢継ぎ早に指示された内容をその場では理解できず、
パニックを起こしてしまうことがある。
合理的配慮B
指示内容を1つずつ簡潔に伝える、メモ書きにして手渡すなど、
本人の特性に合わせた対応を行うことを、部署内で確認統一した。
事例C
従事するサービス業に関連する資格取得のための講義で、
解答用紙への文字の記入が極端に不安定など、回答に難が見られる。
合理的配慮C:
学校でも行われる合理的配慮に準じ、
タブレットの使用を認めるなどで対応した。
事例D
制服で定められた帽子の着用を嫌がり、幾度注意しても直ぐに脱いでしまう。
合理的配慮D
衛生面その他の視点から着用を義務づけているが、
触覚過敏への合理的配慮として、非着用で勤務可能な部署への異動で対応した。
事例E
疲労や緊張が大きな特性のため、
会社が定めた昼休憩や小休止タイムだけでは、確実な作業を続けられない。
合理的配慮E
作業場内に休息スペースを設置し、勤務時間を調整した。
事例F
災害に遭った際、長時間じっと並んで待つことが苦痛で、
避難先の配給の列に並ぶことができず、食事にありつけなかった。
合理的配慮F
一般の列とは別に、障害者、高齢者、乳幼児など、
長時間並ぶことが難しい人を対象とする、別途配給を実施するようにした。
まとめ
発達障害のある人に対する合理的配慮の実施に際しては、
配慮を必要とする人たちに共通する次のような特性を、
事業者側が正しく理解しておく必要があります。
抽象的・あいまいな表現が理解しづらい人、
物忘れしやすい、注意力が散漫になりやすい人、
一定時間落ち着いて、1つの作業を続けることに困難を抱える人、
感覚過敏の影響で、作業に対して本来の力を発揮できない人……。
様々な特性を持つ人がいる中で、その合理的配慮を行うことは、
事業者側にとっても難しい事ではあります。
しかしながら、合理的配慮は大学でも義務化され、
少しずつそのニーズが高まっているのが現状です。
これらの特性を踏まえ、
意思表明があった人それぞれに必要な配慮を見極め、
対話に臨む姿勢が求められます。
合理的配慮は、配慮が必要な本人と、
周囲の人や職場環境との関係によって、
さまざまな内容が考えられるでしょう。
互いを尊重した話し合いを通じ、合意に至る作業が不可欠なのです。
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