はじめに
人に比べ極端に不器用であったり、運動が苦手であったりした場合、
発達性協調運動障害(DCD)の可能性が疑われます。
これは、全身運動や細かく手先を動かすことが極端に苦手で、
日常生活に支障をきたしてしまう、運動面の障害です。
ここでは以下、発達性協調運動障害(DCD)の症状や特性、
必要とされる対策などについて解説します。
発達性協調運動障害(DCD)を理解する
発達性協調運動障害とは、
身体の機能には問題が無いにもかかわらず、
協調運動とよばれる運動がどこかぎこちなく、
全身運動や手先の細かい作業が困難である障害を指します。
協調運動とは、手と目、足と手、手と手など、
身体の個別の動きを連動させて一緒に行う運動のことです。
たとえば飛んで来たボールを受ける際には、
目でボールを追いながら落下点に走り、
手を差し出してボールをキャッチしますよね。
1人縄跳びでは、両手で縄を回すながら、
足でジャンプをリズミカルに繰り返すことでしょう。
他にも、靴ひもを結ぶ、箸先で食べ物をつまむ、自転車を漕ぐなど、
私たちの日常生活上の動きの多くは、協調運動によって成立しています。
そういった協調運動に困難を抱えるのが、DCDの特徴です。
発達性協調運動障害(DCD)の特性と頻度
発達性協調運動障害(DCD)の人には、次のような特性が見られます。
指先を使った作業が極端に苦手
- 箸やハサミなどを思い通りに使いこなせない
- ボタンを上手く止められない
- ひもを結ぶことができない
- 模型などの組み立て(工作)が苦手
- 原稿用紙のマスの中に文字を入れて書けない
- 消しゴムで消すと紙を破ってしまうなど、文法具が上手に駆使できない
など
全身を動かす運動が極端に苦手
- 階段の昇降が危なっかしい
- 縄跳びが飛べない
- 球技全般が苦手
- 自転車に乗ることができない
- ラジオ体操の動きがぎこちなく不自然
など
ちなみに発達性協調運動障害(DCD)の該当者数は、
全体の約6~10%とされているため、
1クラス30人の学級の場合、2~3人が該当している可能性があるといえます。
発達性協調運動障害(DCD)の原因
発達性協調運動障害の原因について、
現時点ではまだ解明されていません。
しかしながら研究の結果、以下の原因が検討されています。
遺伝子的要因
自閉スペクトラム症との併発事例が非常に多いことから、
共通する遺伝子的要因が存在する可能性が検討されています。
またADHD、学習障害、アスペルガー症候群の子どもの場合、
定型発達の子どもと比較して、発症する確率が高いとされています。
妊娠中の母親のアルコール摂取
妊娠中の母親のアルコール摂取、
あるいはこれを原因とする早産や低体重出産の子どもは、
発症率が高くなるとの研究結果が伝えられています。
そのほか、女子に比べて男子の方が発症率の数値が高い、
ということが報告されています。
発達性協調運動障害(DCD)に必要な対策
発達性協調運動障害の人に必要な対策として、
作業療法士などの専門家のサポートがありますが、
ここでは、家庭でもできることをご紹介させていただきます。
保護者が子どもに対してサポートを行う際の注意点として、
訓練ではなく、一緒に楽しみながら続ける姿勢が挙げられます。
不器用さの原因を理解してあげる姿勢を忘れず、
「これはこうするべき」という先入観は横に置き、
長続きさせることを心がけましょう。
たとえば手先の作業が上手にできない場合、
手の筋肉の動きを上手にコントロールできない、手先に意識が向いていない、
手と目の情報が連携していない、などの原因が考えられます。
決して本人がいい加減な動作を行っているのではなく、
この特性を踏まえた上で、次のような機会を与えてあげましょう。
ブランコ、アスレチックなどで遊ぶ
自分の体重を支えるのにどのくらいの力が必要なのかを、
感覚で学ばせることができます。
コインなど小さな物を用いて遊ぶ
握る、つまむ、入れるなどの動作を繰り返し、
五指の力の入れ加減や動きを、感覚で学ばせることができます。
また、一定年齢以上の当事者が自己対応する場合には、便利グッズを活用しましょう。
たとえば指先でつまむのではなく、握って回せるコンパスなどを用いるなど、
細かい作業から腰を引いてしまわない姿勢が大切です。
まとめ
発達性協調運動障害(DCD)は、
日常生活をスムーズに送る際に必要な協調運動が、
年齢相応の水準に対し、著しく不器用である状態のことをいいます。
それぞれの発達障害に加えて、DCDの障害があると、
生活、学習、仕事上の支障が、さらに増えてしまうため、
本人の困り感も大きくなってしまうことが予想されます。
当事者自身の身体について、その状態を正しく理解し、
家族や周囲の人が適切なサポートを行うことが大切です。
このサポートについては、
本人が積極的に身体を動かす行為に取り組む、というような、
前向きな姿勢も求められるため、
周りの人は運動の楽しさを教えてあげるようにしてくださいね。
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